2017年09月27日 14:00 〜 15:00 10階ホール
ロヒンギャ難民支援の日赤医療関係者 会見

会見メモ

ロヒンギャ難民が多く流入する南部コックスバザール州でバングラデシュ赤新月社の巡回診療に同行した横江正道医師、矢野佐知子看護師が会見し、現地報告を行った。両氏は9月16日にバングラデシュに入り、日赤の医療支援の先遣隊として現地調査を行っていた。「避難民の増加が尋常でない。明日の予測も困難。自然災害支援との違いを目の当たりにした」(横江医師)「診療と共に、女性や子どもたちの心のケアが必要だと強く感じた」(矢野看護師)

※国際赤十字では、避難民の多様性に配慮し「ロヒンギャ」という表現は使っていない。

 

写真左から矢野看護師、横江医師

日本赤十字社

 

司会 宮田一雄会員


会見リポート

人道危機生む対立構造の解消を

澤田克己 (毎日新聞社論説委員)

 国際赤十字では「ロヒンギャ」という表現を使わないーー。 

 

 配布資料に記された注釈が問題の政治性を示していた。「ロヒンギャ」という名称の使用すら拒否するミャンマー政府の態度を考えれば、仕方のない選択だ。国境を越えて逃れた人だけでなく、ミャンマー国内にも支援を待つ避難民は多いのである。 

 

 ミャンマー西部ラカイン州に住むイスラム教徒少数民族ロヒンギャを巡る人道危機が深刻化している。8月下旬に武装組織が警察施設を襲撃し、治安部隊が掃討作戦を開始。ロヒンギャ居住地域で多くの家が焼かれ、州内に住むロヒンギャ100万人のうち40万人が隣接するバングラデシュ南部に逃れた。 

 

 バングラ南部には既に、約30万人のロヒンギャが難民として暮らしていた。そこに今回、1カ月も経たない間に40万人以上が新たに流入した。受け入れ態勢の整備が追いつくはずもない。 

 

 国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)の緊急支援要請を受け、日本赤十字社は1000万円の資金援助と医療チーム10人の派遣を決めた。チームは9月27日から巡回診療を始めた。 

 

 日赤の先遣隊(9月16日~9月26日)として現地調査した医師の横江正道さんと看護士の矢野佐知子さんが会見で示した写真には、竹の柱とビニールシートの屋根という粗末な小屋や大きな水たまりが写っていた。雨期に入った現地では、安全な水の確保も大きな課題となる。 

 

 横江さんは、今回の支援活動について「不確実性が高い」と話す。支援対象者がどんどん増える状況では、支援内容を追加していかざるをえなくなるかもしれない。それが、通常の災害支援と違う難しさだという。 

 

 根源的な問題である対立構造の解消を急がねばならないことを痛感させる言葉だ。ミャンマー政府が前向きに取り組むよう、国際社会による働きかけが必要だろう。 

 

 対立の根は19世紀以降の英国による植民地統治にあるが、第二次世界大戦の際に英国がロヒンギャ、日本が多数派仏教徒をそれぞれ支援したことで両者の反目はさらに強まったとされる。日本とも無縁とは言えない問題だ。 

 


ゲスト / Guest

  • 横江正道 / Masamichi Yokoe

    名古屋第二赤十字病院総合内科部長兼国際医療救援部副部長 / Japan Red Cross Society

  • 矢野佐知子 / Sachiko Yano

    大阪赤十字病院麻酔科・集中治療部看護係長 / Japan Red Cross Society

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