2017年09月19日 15:00 〜 16:15 9階会見場
イスラエル人ジャーナリスト アミラ・ハス氏を囲む会

会見メモ

イスラエル・ハーレツ紙占領地特派員として93年からガザとヨルダン川西岸で取材。「パレスチナは、外交官や政治家の言葉と現実にギャップがあり、国際メディアもそれを助長している」と手厳しく指摘。「ガザと西岸は切り離され、住民は一体感を持ちえていない」

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

通訳 宇尾真理子(サイマル・インターナショナル)

 

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会見リポート

〝和平〟の現実伝え続ける

山口弦二 (共同通信社外信部)

 イスラエル左派系紙ハーレツの「占領地特派員」としてパレスチナ自治区のヨルダン川西岸ラマラに住み、イスラエル人でありながら、イスラエルによる不当な占領の実態やパレスチナ人の思いを伝え続ける反骨の記者だ。第3次中東戦争から50年の今年、パレスチナと沖縄の共通点や東電福島第1原発事故後の現状を探るため初来日した。

 

 1993年のパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)直後から占領地に住み始めた。記者会見では、そのころから「外交官や政治家が語る言葉と現実との間に非常に大きなギャップを感じ、フラストレーションを抱いていた」と指摘した。

 

 「94年に和平プロセスが始まった当初から、イスラエルは和平の方向を向いていなかったのが現実だ。94年以前から現在に至るまで、イスラエルがとる政策や措置は全て、2国家共存に向けた和平プロセスをじゃまするものだった」

 

 その上で、ことあるごとに和平交渉進展への期待感をあおるような原稿を書く国際的なメディアの報道も「そのギャップに加担している」と厳しく批判した。

 

 沖縄取材では「住民の大部分が米軍基地の存在に反対している」との印象を持ったとした上で「驚いたこと」として3点を紹介。第2次大戦末期の沖縄戦の規模の大きさを初めて知ったこと、「本土の人々の沖縄に対する無関心、沖縄の人々が米軍基地の存在に苦しんでいることへの無関心、沖縄戦の実態についての無知」に沖縄の住民が苦い思いを抱いていること、さらには「日本政府が国内の米軍基地にどれほどの財政支援をしているのかを知って本当に驚いた」と語った。

 

 日本滞在中、京都市や広島市でも講演するほか、福島県では東電福島第1原発を訪れ、被災者取材もする予定。「原子力問題はこれまで取材したことがないが、唯一の被爆国である日本がどうして、当然のように原子力を推進するようになったのか、その答えを得たい」と意気込みを語った。

 

 強い信念に裏打ちされ、〝敵地〟に軸足を置き続ける記者の確固たる主張は、おのずから説得力が違う。「私の役割は、ありのままの現実を読者に伝えることだ」という言葉は、謙虚に受け止める必要がある。

 


ゲスト / Guest

  • アミラ・ハス / Amira Hass

    イスラエル / Israel

    ハーレツ紙 占領地特派員 / Haaretz correspondent for the Occupied Territories

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