2017年08月31日 11:00 〜 12:00 10階ホール
田中俊一 原子力規制委員長 会見

会見メモ

原子力規制委員会を発足(2012年)以来、率いてきた田中委員長が、退任を前に会見した。「規制委の独立性、中立性、透明性の確保は容易ではないが、維持することが必要」「福島第一原発のような事故を二度と起こしてはならないとの立場でやってきた」「東電は(良い方向に)変わっているが、まだ十分ではない」

 

司会 上田俊英 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

「原発事故 二度と起こさせない」独立性、透明性に努めた5年を総括

菅野 篤司 (福島民友新聞社東京支社)

「原子力利用の是非にはいろいろ考えはあると思うが、利用する場合には少なくとも福島の事故のようなことは二度と起こさせてはいけないということを原則として規制を進めてきた」

 

東京電力福島第1原発事故を受けて発足した原子力規制委員会の初代委員長の田中俊一氏は、5年の任期を終えるにあたっての会見で思いを語った。規制委員会が各地の原発の再稼働の是非を審査するために存在しているのではなく、規制を通じて原子力災害から国民を守るためにあるという、忘れがちな本質を思い起こさせる言葉だった。

 

2011年3月の原発事故以前の原子力安全に対する考え方については「(原発の)経済的なところを優先するあまり、もうからない規制に手を抜いていた」と表現。その上で、規制委員会では、最新の科学的な知識を導入した新規制基準を事業者に守らせるため「対応は原発1基当たり1千億もかかりますから、事業者としては抵抗があったと思う。しかし、われわれはそれに目をつぶり厳しく求めた」と振り返った。「事業者の姿勢も変わった」とも述べ、一定の成果があったと自己評価した。

 

科学的な判断に基づく規制を推進できた背景として、田中氏は規制委員会の独立性や意思決定のプロセスを全て公開する透明性の確保を挙げた。言い換えるならば、規制委員会の要求に対し、仮に事業者が合理的でない理由で拒否やごまかしをした場合、議論を注視している国民にその動きがばれてしまう環境のことだろう。原発事故という決して望まなかった悲劇をきっかけに、国民が得た貴重なシステムとも言える。

 

会見で田中氏は「こういうシステムをやめるとなった時は、皆さんに注意して見ていただく必要がある」と述べた。もとより、透明性がある規制行政をチェックすることは報道機関の責務。退任に際してのメッセージ、確かに受け取りました。


ゲスト / Guest

  • 田中俊一 / Shunichi Tanaka

    日本 / Japan

    原子力規制委員会委員長 / Chairman , the Nuclear Regulation Authority

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