2017年10月10日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「チェンジ・メーカーズに聞く」(22) シャシュア モービルアイ会長・CTO 

会見メモ

車両探知、自動ブレーキなど自動運転技術開発の世界的な企業、モービルアイ(イスラエル)の共同創業者で、会長・CTO(最高技術責任者)を務めるアムノン・シャシュア(Amnon Shashua)ヘブライ大学教授が会見した。

 

司会 安井孝之委員

通訳 吉國ゆり

 


会見リポート

自動運転実現―事故死亡率1000分の1がカギ

寺岡篤志 (日経BP社日経ビジネス編集部)

 中東のシリコンバレーと呼ばれるイスラエルの企業、モービルアイは、車載カメラ用画像解析チップを手がける。日本での知名度はさほど高くないが、日産自動車の自動運転機能「プロパイロット」の黒子として、同社のチップが活躍している。独フォルクスワーゲンや米ゼネラルモーターズなどとも技術提携を結んでおり、シャシュア会長は自動運転分野での世界的なキーマンの一人といえる。

 

 会見では、イスラエルの技術者らしく、ヒトが介入しない完全自動運転の実現への課題を理知的かつ具体的に解説してくれた。特に印象的だったのは「1000分の1」というテーマだ。

 

 シャシュア会長によると、1時間のヒトの運転で死亡事故が起きる可能性は10のマイナス6乗(100万分の1)。この結果、米国では年間約3万5000人が交通事故で死亡する。完全自動運転では事故責任はクルマ側にある。年間3万5000人がAI(人工知能)の判断により死亡することは社会的に許容されないだろう。「許されるラインは数十人。つまり、1時間あたりの死亡確率を現状よりも1000分の1引き下げ、10のマイナス9乗(10億分の1)にする必要がある」というわけだ。

 

 これを可能にするのが高精細地図だとシャシュア会長は断言した。障害物や交通標識も明示された地図を使って先を読む機能を補完するわけだ。自動運転の社会受容性は日本の自動車メーカーの関係者も指摘している課題だ。シャシュア会長との違いは「1000分の1」という明確な基準を示しているかどうか、という点だろう。

 

 日本の関係者がしばしば口にする「死亡事故ゼロ」という自動運転での目標は、まだ実現の可能性が見えていないお題目のようにも聞こえる。裏返せば「自動運転を積極的に市場投入しない理由」と取れなくもない。この違いは自動運転での出遅れにつながるか、はたまた日本車の信頼性を高める結果になるのだろうか。

 


ゲスト / Guest

  • アムノン・シャシュア / Amnon Shashua

    イスラエル / Israel

    モービルアイ会長・CTO / Chairman・CTO, Mobileye

研究テーマ:チェンジ・メーカーズに聞く

研究会回数:22

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