2017年08月10日 13:00 〜 14:00 10階ホール
シュタイナー 国連開発計画(UNDP)総裁 会見

会見メモ

今年6月に就任。2030年までの達成をめざす国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」について「各国のあらゆる社会のレベルで関連活動が拡大している。日本では企業が積極的に関与している」と評価。ただし「富の集中が進んでおりリスクになる」と警告した。

 

司会 土生修一 日本記者クラブ専務理事

通訳 西村好美(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

過激主義を超えるSDGsの可能性

宮田 一雄 (産経新聞出身)

開発や環境分野の国際機関、NGOでの長いキャリアを経て今年6月、UNDP総裁に就任した。国際社会の共通目標として昨年スタートした15年間の持続可能な開発目標(SDGs)に向けて、国連の諸機関やプログラムを統括する国連開発グループの議長でもある。

 

就任早々の来日。「国連が初めて開発分野の目標にユニバーサリティ(普遍性)を掲げた」とSDGsの意義を語る。2015年までのミレニアム開発目標(MDGs)のゴールが8項目だったのに対し、SDGsは17に増え、地球温暖化対策など先進諸国が自国で取り組むべき目標も含まれている。

 

「これまでのパラダイムでは、開発に伴い、社会格差や環境破壊が生ずるのはある程度、避けられないので、開発を優先し、それに伴って生じる問題には後で追いつけばいいという考え方だった」

 

どうして変わったのか。パラダイムシフトはどこで起きたのか。

 

「2008年の国際金融危機以来、多くの悲劇的な事例が出てきた。それが過激主義や分断、他者排除の動きにもつながった。(SDGsを定めた)2030開発アジェンダでは、どうすればそれを変えられるのかが検討された」

 

7月にはニューヨークでSDGsハイレベル政治フォーラムが開かれ、各国の対応を集約した。日本も進捗報告を出している。政府内に推進本部ができ、NGO、有識者、民間セクター、国際機関などを交えた推進円卓会議も設けられた。

 

「企業もCSR(社会貢献活動)としてだけでなく、キープレイヤーとして関与している」と評価する。

 

一方で懸念材料を問われると、「SDGsの最大のリスクは、富の集中と不平等にある」と指摘した。

 

「資本を持つ人がどんどん富を蓄積し、働く人には回ってこない。これはどの国にもあてはまる。欧米で反グローバリゼーション、反外国人の気運が広がったのもそうした背景があるからではないか」

 

どの国もということは、日本にもあてはまるということだろう。SDGsへの国内の社会的関心は、残念ながら会見で語られていたほど高いようには感じられない。日本に向けられたものではないが、過激主義が広がる現状について「経済の失敗、政策の失敗に目を向ける必要がある」と指摘していたことも付け加えておこう。


ゲスト / Guest

  • アヒム・シュタイナー / Achim Steiner

    国連開発計画(UNDP) / United Nations Development Programme (UNDP)

    総裁 / Administrator

ページのTOPへ