2017年10月19日 14:45 〜 16:00 9階会見場
「トランプ政権:米国と世界の行方」11 米世論調査から読み解く

会見メモ

10月17日発表された38カ国で実施した意識調査の結果では、米国への好感度や米政権への信頼度は日本を含め西欧諸国で急降下していた。「ただし、日本では若者層が高齢者層よりもトランプ大統領の指導力やカリスマ性を好意的にとらえている」と指摘した。

 

ピュー・リサーチセンター

ピュー・リサーチセンター研究員ページ

 

司会:杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信社)

通訳:宇尾真理子(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

“数字”が語る世界の流れ

出石直 (NHK解説委員)

 アメリカのワシントンに本部を置くピュー・リサーチセンターは、ことし2月から5月にかけて日本を含む38カ国でおよそ4万人を対象に世論調査を行った。

 

 詳細は無料で公開されている同社のウェブサイトで見てもらうとして、日本に関して印象に残ったことをランダムに列挙すれば、

―日本人の多くは現在の経済状況に満足しているが将来に対しては悲観している。

―中国については政府も指導者も好感しておらず脅威と感じている。

―トランプ大統領は傲慢で寛容さに欠ける危険な人物と見ているが、若者層の間ではカリスマ性のある強い指導者として比較的評価が高い。

 

 ストークス氏が「非常に興味深い結果」と強調したのが、日本人の7割以上が代表民主主義を支持している一方、6割以上が直接民主主義にも良い印象をもっていると答えた点。考えられる理由として、現行の代表民主主義に対する不満、未経験の直接民主主義への期待、意思決定を容易にするインターネットの普及、の3点を指摘した。ヨーロッパ諸国でも日本と同様の傾向が見られるとのことだが、最近、国民投票を経験したイギリスとオランダで直接民主主義への支持が低かったというのも皮肉な結果だ。

 

 アメリカ国民のトランプ大統領への評価はおしなべて厳しいものがあるが「アメリカ社会は2つの“部族”に分かれ部族主義化している」という指摘は新鮮だった。貧困対策、人種差別、移民政策など社会問題についての考え方が両極化し、国民が共有できる価値が少なくなってきているというのだ。

 

 2016年の大統領選挙で世論調査はトランプ氏の当選を予測することはできなかった。ストークス氏は「州レベルの調査を経験の乏しいローカルメディアに頼ってしまったため、低学歴層の投票行動を見誤ってしまった」と問題点を率直に認めた。想定外の出来事が次々と起こる時代、私達は数字に現れない変化にも目を光らせていく必要がありそうだ。

 


ゲスト / Guest

  • ブルース・ストークス / Bruce Stokes

    ピュー・リサーチセンター / Pew Research Center

    国際経済世論調査調査部ディレクター / director, global economic attitudes

研究テーマ:トランプ政権:米国と世界の行方

研究会回数:11

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