2017年10月11日 14:30 〜 15:45 10階ホール
アブターレブ ロッテルダム市長 会見

会見メモ

欧州主要都市で初のイスラム教徒の市長。174国籍もの市民を抱えるロッテルダム市は毎年多数の移民を受け入れ、同化政策に力を入れる。自身もモロッコからの移民。「受け入れた以上、平等に扱う。ただオランダ社会への融合を拒否する移民は他国に行った方がよい」

 

司会 ヴィーラント・ワーグナー 日本記者クラブ企画委員(シュピーゲル)

通訳 西村好美(サイマル・インターナショナル)

YouTube会見動画

会見詳録


会見リポート

「ゼロ」から大都市トップへ 教育の重要性を強調

田中寛 (共同通信外信部)

 自信にあふれ、どこか凜とした印象を受ける。流ちょうな英語による記者会見は、テーマが移民の同化政策や民主主義、教育、歴史など多岐にわたり、深い見識と知性にあふれ圧倒されそうなほどだった。

 

 オランダ・ロッテルダムのアーメッド・アブターレブ市長は、北アフリカのモロッコ生まれ。10代のとき「移民の子」としてオランダにやって来た。いわばゼロからのスタートだったが、異国の地でしっかりと教育を受け、ついにオランダ第2の都市のトップにまで上り詰めた。イスラム教徒として初めて欧州の大都市の市長になった人物だという。並々ならぬ努力をしたのだろう。「何といっても教育。教育によって(人は)平等になれる」との言葉が心に響いた。

 

 政策を実行するだけでなく、市長自ら市民のところに出向いて対話を繰り返し、信頼と理解を求める地道な努力があってこそ町に平和がもたらされると熱弁をふるう姿も印象的だった。

 

 少子化が進む日本は今後、移民をどう受け入れるかが大きな課題となりそうだ。「移民先進国」であるオランダから学ぶことは多い。人口約60万人のロッテルダムだが、「人種のるつぼ」とされる米ニューヨークと同じくらい「複雑な社会だ」と自負を込めて話す。ロッテルダムには170カ国以上の人々が暮らし、モノだけでなくヒトが国と国、都市と都市を行き交い、そのことが社会にダイナミズムをもたらす。トランプ米政権が移民規制に乗り出す中、隣国カナダのトルドー首相がこれまで通り移民を受け入れる方針を示し、「多様性はわれわれ(カナダ)の強みだ」とツイートしたことを思い出した。

 

 会見の最後の方でこう訴えた。「民主主義(の要素)は3つある。1人1票であること、多数派が統治すること、そして何より重要なのは多数派には少数派を保護する義務があることだ」。移民出身のイスラム教徒の市長として、マイノリティーへの温かなまなざしを忘れていなかった。

 


ゲスト / Guest

  • アーメッド・アブターレブ / Ahmed Aboutaleb

    オランダ / The Netherlands

    ロッテルダム市長 / Mayor of Rotterdam

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