2017年07月05日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「2025年ショック どうする医療・介護」(3) 太田秀樹医師

会見メモ

1992年から全国に先駆けて24時間365日対応の在宅医療を行っている。一般社団法人全国在宅療養支援診療所連絡会事務局長も務める太田医師が、在宅医療の現状と医療・介護の一体改革や地域包括ケア改革について語った。

 

司会 梶本章 前日本記者クラブ企画委員(朝日新聞出身)


会見リポート

転換求められる医療の役割

山崎 友記子 (毎日新聞社医療福祉部副部長)

医療・介護関係の取材をしていると近年、避けては通れない「地域包括ケアシステム」。そんな言葉や概念が生まれるはるか前の1992年から、多職種で連携し、24時間・365日対応、自宅で最期まで見届ける在宅医療に取り組んできた太田秀樹先生から、その重要性と実践を聞いた。

 

日本人の寿命が延び、大部分の高齢者は治療より介護が必要な虚弱な期間を経て亡くなる。しかし、日本人はいまだ医療が高度化した時代の「病院信仰」から抜けきれず、死なせないのが医療というイメージが強い。病院死の割合も、先進諸国と比べ日本は圧倒的に高い。太田氏は、超高齢、多死社会の医療の役割は、苦痛を取り除き、その人の尊厳を守り、生活を支えることだと指摘し、病院完結型から地域完結型の医療に変わらなければならないと訴えた。

 

長年の実践から、生活の場で提供する在宅医療の主役は訪問看護師であり、最期まで口から食べられるよう支援する訪問歯科の協力が欠かせないと強調した。また、医療機器の小型化や高性能化、貼るだけの医療麻薬といった新薬の開発などによって、在宅医療の質は病院医療と遜色がないほど向上していると説明した。

 

太田氏の経営する医療法人では、栃木県小山市など3市で計3カ所の機能強化型在宅療養支援診療所を運営。それぞれショートステイや老人保健施設を併設しているため、在宅での療養が厳しい時には施設ケアが受けられ、「即入院」を避けられるという。

 

食の重要性を繰り返されていたのが印象的だった。最期まで好きな物を食べられることが人間の尊厳につながるのだと。高齢者への多剤投与が問題となっており「薬でお腹がいっぱいになる」という冗談ともつかない話をよく聞く。人として当たり前の行為、喜びを大切にすることが暮らしを支える医療の本質にあると思い知らされた。


ゲスト / Guest

  • 太田秀樹 / Hideki Ohta

    日本

    (医療法人アスムス理事長、一般社団法人全国在宅療養支援診療所連絡会事務局長)

研究テーマ:2025年ショック どうする医療・介護

研究会回数:3

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