2017年06月23日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「北朝鮮の核とミサイル」(7) 道下徳成 政策研究大学院大学教授

会見メモ

「金正恩の指導者としての能力は父親より上」「米朝間の紛争は全面戦争にはならないが北朝鮮による韓国限定攻撃はありうる」「朝鮮人民軍は破壊力を持つが機動力はない」「日本は、敵基地攻撃能力について落ち着いた議論を今からやるべき」

 

司会 山本勇二 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

韓国への限定攻撃、最も懸念

福元竜哉 (読売新聞編集委員)

シリーズ7回目の今回は、安全保障の専門家で朝鮮半島情勢に詳しい道下氏が、「北朝鮮の核・ミサイル開発の目的と日米の対応」をテーマに講演した。

 

道下氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発の目的について、①米国による予防攻撃を阻止するための「平時の抑止」②朝鮮半島有事で米国や日本が韓国を支援するのをためらわせる「戦時の抑止」③韓国に対する限定攻撃④瀬戸際外交――の4つを挙げた。

 

このうち、③の韓国への限定攻撃を「最も現実的で、私が最も懸念するシナリオ」と強調し、その理由として「韓国のみが北朝鮮の体制を崩壊させ、吸収し、統一する意思と能力を持っている。北朝鮮は、体制を脅かす韓国を弱体化させる必要性に迫られている。その目的を達成するため、韓国に限定的攻撃をする可能性がある。韓国の方が失うものが大きい」と述べた。

 

日本の対応については、政府が弾道ミサイル防衛の強化策として検討している、陸上型イージスシステム「イージス・アショア」や「THAAD(サード)」のプラス面・マイナス面を解説し、国民保護の認知度の高まりも指摘した。また、敵基地攻撃能力の保有に関する私見として、「現有のF2戦闘機と、すでに導入が決まっているF35から自然に得られる攻撃能力を有効活用する。最低限の攻撃能力を保有することで、一定の安全保障・外交上の効果を得ることが必要だ」と提言。「日本はパンチを出さないボクサーではなく、たまには打ってくると思わせることで、相手の攻撃作戦を難しくすればそれで十分だ」と語った。

 

続く質疑応答では、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の交渉能力について、「父の金正日氏より、正恩氏の方がリーダーとして能力が高い可能性がある。北朝鮮からすると合理的な行動をしている」との見方を示した上で、正恩氏や北朝鮮の政策決定者らの政策推進能力を見極める場として、北朝鮮との「何らかの交渉ごと」を考える必要があると述べた。

 

「日本はミサイル防衛を惰性でやっている。国民保護にもっと力を入れるべきではないか」との質問には、「国民保護と攻撃能力保有により充実した資源配分をするというのは、私も原則として大賛成だ」と応じた。 


ゲスト / Guest

  • 道下徳成 / Narushige Michishita

    日本 / Japan

    政策研究大学院大学教授 / prof., National Graduate Institute for Policy Studies

研究テーマ:北朝鮮の核とミサイル

研究会回数:7

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