2017年06月08日 15:00 〜 16:30 9階会見場
「イラン情勢と米国の中東政策」 高橋和夫 放送大学教授/田中浩一郎 日本エネルギー経済研究所・中東研究センター長

会見メモ

壇上左から田中浩一郎氏、高橋和夫氏

 

 「オバマ時代は、大統領補佐官など側近にイラン関係者がいた。トランプ周辺にはイランに憎悪を抱く米軍関係者が多い」(高橋)「イランは制裁時に協力的だった中国に恩義があるが、ガラクタを売りつけられた面もある。対中の基本は付き合うが頼らない」(田中)

 

司会 脇祐三 日本記者クラブ前企画委員(日本経済新聞社)


会見リポート

「トランプ時代の中東」をどう見るか

脇 祐三 (日本経済新聞社コラムニスト)

5月のイラン大統領選でロウハニ師が再選された。トランプ米大統領はサウジアラビア、イスラエルを歴訪し、「共通の脅威はイランと過激派」と強調した。6月に入ってサウジなどがカタールと断交し、テヘランで連続テロが起きた。中東をめぐる国際情勢の変化とその背景について、2人のゲストは論理的な整理と感覚的な説明を交えて語った。

 

イラン大統領選について田中氏は、「保守強硬派も核開発問題の合意自体は否定せず、開放政策で外資導入を進めようとするロウハニ政権と、自前の経済強靱化を唱える保守強硬派の経済路線の違いが争点になった」と解説。保守強硬派が善戦した背景には、「トランプ氏の暴言に対してロウハニ師がおとなしいことへの不満もある」と指摘した。

 

高橋氏は「トランプ政権には政策の整合性がない」「ロシアゲートで失脚するのがホワイトハウスにいる側近なら、閣僚の発言力が増す」と説明した。そのうえで、マティス国防長官ら中東経験がある将軍たちは、米兵が犠牲になった過去の事件にイランが関与していたという不信感が強く、「イランへの姿勢は厳しい」と付け加えた。

 

「トランプ氏は他人の意見に乗せられやすい。サウジとイスラエルの立場が近いという図式は、イスラエルが強調してきたこと」と田中氏は言う。トランプ大統領は米大使館の移転実行を先送りし、エルサレムに対するイスラエルの主権を認めるのを避けたが、「ネタニヤフ政権が移転を望んでいるかも疑問。サウジとの距離を縮めにくくなるからだ」と高橋氏は見る。

 

イスラエルもアラブ諸国も、自らに都合のいい部分だけ相乗りして米国を利用しようと動く。個々の発言や宣伝に振り回されず、実際に何がどう変わるかを見る必要がある。「トランプ時代の中東」の見方を示す会見でもあった。


ゲスト / Guest

  • 高橋和夫 / Kazuo Takahashi

    放送大学教授 / professor, The Open University of Japan(Hoso-Daigaku) 

  • 田中浩一郎 / Koichiro Tanaka

    日本エネルギー経済研究所常務理事、中東研究センター長 / Head of JIME Center, Institute of Energy Economics, Japan

研究テーマ:イラン情勢と米国の中東政策

前へ 2024年03月 次へ
25
26
27
28
29
2
3
4
5
9
10
11
12
16
17
20
23
24
30
31
1
2
3
4
5
6
ページのTOPへ