2017年06月13日 14:00 〜 15:00 9階会見場
著者と語る『難民鎖国ニッポンのゆくえ』根本かおる 国連広報センター所長

会見メモ

日本の難民問題を考える入門書的新書を上梓した。昨年、日本の難民認定申請者は1万人を超えたが、認定されたのはわずか28人。認定率はG7中、ダントツの最下位。「門番役」の法務省入国管理局が、難民審査を担当している点など制度の問題点を指摘した。

 

司会 土生修一 日本記者クラブ専務理事


会見リポート

「難民鎖国」を解説

 木寺もも子 (日本経済新聞社国際アジア部)

6月20日の「世界難民の日」を前に開かれた会見。5月に『難民鎖国ニッポンのゆくえ』の新書改訂版を刊行した根本かおる・国連広報センター長が登場した。

 

2015年末時点で、世界の難民(国内避難民を含む)は第2次世界大戦後最多の6500万人に上った。翻って16年の日本の難民認定数は28人。認定率にして0・3%で、主要7カ国(G7)の間での受け入れ割合は0・013%にとどまる。「四捨五入すると立派なゼロ」。根本氏はそう強調した。

 

フリー記者から、現在は国連広報センター長に就いた立場上、日本政府の姿勢を批判することは避け、シリア出身の留学生受け入れなどは「ありがたい」と評価していた。それでも、制度の問題点は鋭く突いた。

 

例えば、法務省入国管理局が難民を審査することについて「国境を守る入国管理の視点で難民保護を担当するのは無理がある」。各国同じ難民条約の定義に基づいて難民を審査しているはずなのに、これほど認定に差がつくのはおかしいという指摘ももっともだった。

 

昨年初めて1万人を突破するなど、近年急増する日本の難民認定申請については、就労目的の制度悪用も指摘されている。根本氏は「悪用がゼロとは言わないが、申請が一度で認められにくいため再申請が多くなる事情が大きい」と説明した。実際に困っている当事者に多く接してきた実感だろう。

 

前向きな話題もあった。大学生ら若者が高い関心を持って行動していることが紹介された。過酷な体験をくぐり抜けた難民を「サバイバル人材」として海外市場開拓に活躍してもらう可能性に注目する企業もあるという。

 

難民に関連しては、経済的移民を含む移民全体についての議論が進まない背景もある。ただ、難民は根本的には人道問題だ。無策に世論が熟すのを待つだけでは済まないだろう。


ゲスト / Guest

  • 根本かおる / Kaoru Nemoto

    国連広報センター所長 / United Nations Information Centre

研究テーマ:『難民鎖国ニッポンのゆくえ 』

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