2017年05月30日 17:30 〜 19:00 9階会見場
研究会「ニュースメディアとグラフィックス」アラン・スミス FT データ可視化担当エディター

会見メモ

英国家統計局出身。FT紙で使われるグラフの総責任者。「人の記憶に残るのは、数字よりビジュアル。だからデータの可視化が重要」。棒グラフの縦横の軸を入れ替えた例などを見せ「グラフは文字抜きで理解できなければいけない」と力説した。

 

司会 山本智 NHK報道局ネット報道部チーフ・プロデューサー

通訳 秋山賛


会見リポート

グラフは“添え物”ではない

山本 智 (NHK報道局ネット報道部チーフ・プロデューサー)

「グラフだけで完結できるような力強いデータビジュアライズが必要だ」

 

フィナンシャル・タイムズで初めての可視化担当エディターに就任したアラン・スミス氏が会見で繰り返し強調したのが、この言葉だ。「グラフを見ただけで、何を伝えたいのかがわかるべきだ。“なぜ”“だから”の部分を記事で書けばよい」「よい記事には、よいグラフが必要だ。ときには、グラフから説き起こして記事を書くケースもあるべきだ」「よいグラフはグラフだけで一人歩きができる。一人歩きできるグラフは、ソーシャルメディアでも拡散する」――。ともすれば、正確さだけを求め、記事の理解を促す“添え物”程度にしかグラフを考えていなかった私にとって、具体的なケースを示しながら、わかりやすくデータビジュアライズの重要性を説明するアラン氏の会見は、非常に刺激を受けた。

 

会見では「ビジュアルボキャブラリー」と呼ばれるグラフの表現方法の概念図も紹介された。「へだたり(Deviation)」や「関係性(Correlation)」「順位付け(Ranking)」といったデータの関係性を強調するときに、どのような種類のグラフを使えばよいのか、わかりやすく示されている。実際にグラフを制作するときにすぐに役に立つ実践的な資料で、参加者にも共有してくれた。聞けば、フィナンシャル・タイムズのニュースルームには、この概念図のポスターが貼られていて、記者やエディターに、データビジュアライズを常に意識づけるようにしているという。

 

紙やテレビと異なり、ウェブの世界では、多彩で豊かなデータビジュアライズが比較的容易に実現できるようになっている。ウェブの重要性がますます高まるなか、アラン氏の会見は、今後のニュースコンテンツがどうあるべきなのか、1つの方向性を示していると感じた。


ゲスト / Guest

  • アラン・スミス / Alan Smith

    フィナンシャル・タイムズ ・データ可視化担当エディター

研究テーマ:ニュースメディアとグラフィックス

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