2017年05月29日 16:30 〜 17:30 10階ホール
総会記念講演会 川村元気  映画プロデューサー・小説家

会見メモ

川村さんは「告白」「悪人」「バケモノの子」「君の名は。」「怒り」などの映画を製作。2011年に優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を最年少で受賞。

著書に小説『世界から猫が消えたなら』『億男』『四月になれば彼女は』などがある。

総会記念講演会では「面白さの『発見』組み合わせの『発明』」の演題で話した。


会見リポート

“元気”にするプロデュース術

鵜飼 哲夫 (読売新聞社文化部編集委員)

邦画としては歴代興行収入2位を記録した「君の名は。」と、「怒り」「何者」という昨年プロデュースした映画が全てヒットした“時の人”である。小説『四月になれば彼女は』も話題の才人は、いきなり上智大学新聞学科出身で、もとは記者になりたかった、と聴衆である記者たちを引き付けた。

 

その上で、映画は料理に似ていて、良い素材(物語・テーマ)と適切な料理(監督、脚本、俳優の選択)、工夫を凝らした盛り付け(宣伝・広告)が必要とし、新聞からヒントを得ることも多い、とサービス精神も満点だった。

 

笑って泣ける娯楽作品が主流だった中で、あえて悪意のエンターテインメントをつくろうと映画「告白」を企画した体験など、着眼点がユニークな話が多かった。中でも注目したのは、古今和歌集という古典的題材とスマホという現代的素材、災厄というテーマなどさまざまな要素を盛り込んだ「君の名は。」のつくり方。「昔のエンターテインメントのように、ひと言で言えるものは、もはや通用しない」と分析しつつ、こう断言した。「今は、テレビを見ながら新聞、雑誌を開き、スマホ片手にツイッターやフェイスブックをやる時代。ワンコンセプトでつくる作品では読者は納得しない」

 

わかりやすく、正確に、という古典的な新聞のコンセプトに対する39歳の企画人の挑戦と、新たなニュース表現の可能性の示唆を感じた。

 

自分のやりたいことをやってきただけで、今までの話は全て後付けの屁理屈で、実はマーケティングデータも見たことがない、と最後に告白したことも印象に残る。やりたいこととは、多くの人が気付き、何かを感じていながら、まだ表現になっていない集合的無意識を発見し、それを映像や文章にして幸福の形を表現すること、という。「元気」は、本名。聞く者の脳を元気にし、新聞、テレビを通して幸せの形を探す記者には刺激的な講演だった。


ゲスト / Guest

  • 川村元気 / Genki Kawamura

    映画プロデューサー・小説家

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