2017年06月06日 14:00 〜 15:30 10階ホール
著者と語る 『「接続性」の地政学:グローバリズムの先にある世界』パラグ・カンナ シンガポール国立大学公共政策大学院・上級研究員

会見メモ

インド生まれ、ドバイ育ち、米英で高等教育を受けた国際派エリート。「相手との接続がなければ、相手に影響を与えられない」「現代の接続性とは、空路、鉄道・道路、パイプライン、サプライチェーンなど。日本は一帯一路構想やAIIBへの『接続』必要」

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

通訳 宇尾真理子(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

気鋭の若手が読み解く「世界」

杉田 弘毅 (企画委員 共同通信社論説委員長)

「接続性の地政学」。聞き慣れない言葉を使って日本でいくつもの講演をこなす若手国際政治専門家がその意味を語ってくれた。地政学と言えば、かつては地理や地形、自然環境などが国家の命運を決めるから、それらを深く研究して国家戦略を立てるべきだ、という決定論に要約できた。

 

しかし、今は違う。技術革新で地理はかつてのような意味をもたなくなった。「代わって重みを増しているのが、航空路、鉄道網、道路網、シーレーン、パイプライン、高速インターネット、そしてサプライチェーンなど、いかに効率よい接続を実現できているか、である」

 

その主張の背景にあるのは、グローバル化は止まらないから、他国・他地域との関係を断ち切ってしまえば、それだけ国運は傾いていく、という確固たる結論がある。トランプ大統領が保護主義に傾斜すれば、それだけ米国に将来はないということになる。

 

しかし、米国の接続性は貿易だけでない。トランプ氏が環太平洋連携協定(TPP)、パリ協定からの離脱を宣言しても、軍事、金融、エネルギー、テクノロジーの4分野で世界とつながっている、と言う。トランプ氏の意向にかかわらず、米国は世界をがっちりと握っているわけだ。

 

さて、接続性がものを言う時代に、日本は何をすべきか。技術力を磨くのはもちろんだがそれだけでは足りない。ユーラシア大陸とは海を隔てているが、「そこに接続していなければ、影響力を発揮できない」というのが持論だ。つまり接続性の地政学の典型例である中国の「一帯一路」や、アジアインフラ投資銀行に「接続」していた方が良いということか。

 

インドで生まれ、ドバイで育ち、米国と英国で高等教育を受けたグローバルエリートである。今回刊行された『「接続性」の地政学』のほかに『「三つの帝国」の時代』など、地球を丸づかみして分析するのが得意だ。議論はやや粗いが、その意気は大いに良い。


ゲスト / Guest

  • パラグ・カンナ / Parag Khanna

    シンガポール国立大学公共政策大学院・上級研究員 / Senior Research Fellow, National University of Singapore

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