2017年04月27日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「トランプ政権:米国と世界の行方」7 トランプ政権と通商政策 渡邊頼純 慶大教授(国際政治経済論)

会見メモ

日墨EPA交渉の首席交渉官など実務の経験も豊富。「TPP離脱で損するのは米国自身。日本は、米国をTPPに戻すためにも、米国抜きの『TPPマイナス1』の早期発効をめざすべき」「TPPを米議会の承認がいらない行政取り決めにする方法もある」

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

米国抜きTPP パンドラの箱は開けるな

竹田 忠 (企画委員 NHK解説委員)

2017年は、多国間貿易体制にとって、戦後最大の難関となる。こう言い切る渡邊頼純氏は、学問の世界と国際通商交渉の前線とを行き来するユニークな経歴を持つ。GATT事務局でウルグアイラウンドの関税交渉や日本・メキシコEPAでは、日本側の主席交渉官もつとめた。

 

英国のEU離脱と、米国のTPP離脱。2つの「離脱」をどう乗り越えるか? 正念場だと説く。

 

そのために大事なのが米国抜きのTPP発足。TPP11(イレブン)とかTPP-1(マイナスワン)などと呼ばれている米国抜きのTPPを日本が率先して実現させ、将来は米国の復帰を促すべきだという。

 

無論、現在の協定では、米国抜きでは発効要件を満たさないため、参加国の再交渉が必要になる。重要なのは、見直すのは発効要件だけにして、それ以外の関税率などの合意事項には、一切手をつけないこと。パンドラの箱は開けてはいけない! そうでないとまとまらなくなる! そう警鐘を鳴らす。

 

そもそも、巨大な市場を持つ米国抜きのTPPに、他の11カ国がそのままとどまるだろうか? 氏は、多国間の貿易体制を守るためだけでなく、日本みずからの未来をかけて、発足に尽力すべきだと主張する。なぜなら、人口減少で経済力が頭打ちになる日本にとって、TPPを基盤にしたアジア太平洋での生産ネットワークの強化こそが、日本の国際競争力を強化し、「グローバル・パワー」として生き残る道だと説く。

 

「秩序を重んじよ。されば秩序は汝を守るであろう」。聖アウグスチヌスの言葉を氏は揮毫した。

 

トランプ政権就任100日を前にした氏の講演は、問われているのは国際貿易体制と共に、日本の覚悟であることを示すものとなった。


ゲスト / Guest

  • 渡邊頼純 / Yorizumi Watanabe

    慶応大学教授 / Professor, Keio University

研究テーマ:トランプ政権:米国と世界の行方

研究会回数:7

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