2017年04月17日 17:30 〜 19:45 10階ホール
試写会「パトリオット・デイ」

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会見リポート

無差別テロ 防止策は市民の連携・協力

傍示 文昭 (西日本新聞社東京編集長)

無差別テロ事件が後を絶たない。最近は組織集団ではなく単独犯による自爆テロも増えている。根絶は極めて難しいのが現実だ。

 

本作は2013年4月15日、米マサチューセッツ州の「愛国者の日(パトリオット・デイ)」に開かれたボストン・マラソンのゴール付近で起きた爆弾テロ事件を題材にしている。コース沿道に置かれた爆弾2個が相次いで爆発し、子どもを含む3人が死亡、264人が負傷した。

 

映画は事実に即して大会前日から犯人逮捕までの5日間を追う。州知事、市長、FBI、州警察、市警察が共同で捜査に当たり、監視カメラの映像からチェチェン系の兄弟2人が容疑者として浮上。当局は公共交通機関の運行を全て停止し、市民に外出自粛と商業活動の停止を呼び掛けて犯人を追い詰める。これらは法律ではなく市民の自発的な協力に準拠していた。

 

仮に数の力で「共謀罪」を成立させても反発しか生まれない。自由に立ち入れる場所を制限したり、多くの人が楽しむ催しを縮小したりすれば、それだけ社会が安全と引き換えに払う代償を高めることになる。それこそテロリストの思うつぼだろう。

 

市民の自由をできるだけ狭めずに、無差別テロを防ぐための鍵は市民一人一人の意識にある。日々の暮らしの中で不審な物や異常に気づけば声を上げる。不幸にも有事が起きれば助け合う。自然災害への取り組みと同じように、テロ封じ込めで重要なのは市民の連携と協力であることを本作は改めて教えてくれる。

 

映画のエンディングで実写映像が流れる。爆弾テロで両足を失った男性が義足で16年の大会に参加し、笑顔でゴールするシーンだ。「どんなに傷ついてもテロに屈しない」。このメッセージこそ、テロ根絶に向けた原点であることを噛みしめたい。


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  • パトリオット・デイ

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