2017年04月26日 14:30 〜 16:00 10階ホール
「トランプ政権:米国と世界の行方」6 トランプ時代の世界秩序 船橋洋一 日本再建イニシアティブ理事長

会見メモ

トランプ現象を米国の歴史、思想、国際政治・経済・貿易面から読み解き、日米関係やアジア外交での日本の立ち位置などについても考えを述べた。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

国際秩序の再興はあるか

杉田 弘毅 (企画委員 共同通信社論説委員長)

不安が世界を覆う。当たり前だった国際協調の精神が大きく後退したからだ。国際協調の揺らぎは破局につながると、歴史は教える。自由で開かれた国際秩序(リベラル・インターナショナル・オーダー)の再興はあるのか。

 

いくつもの示唆に富む発言があった。

 

▼「トランプ大統領の『米国ファースト』とは、ウィルソンの『理念外交』、ルーズベルトの『ニューディール』、ジョンソンの『偉大な社会』などの時代を画した政策原理に匹敵するものになるかもしれない」▼「レーガン以来のネオリベラルな経済、グローバル化の末に金融利害に取り込まれた資本主義は今のままでは長続きしない」▼「多文化主義への反動として、米国でもナショナリズムが出てくるのは避けられない。その場合でも、エスニック(白人・キリスト教)ナショナリズムでなく、シビル・ナショナリズムにしないと、米国の統合に亀裂が走る」▼「トランプ氏は自由で開放的な国際秩序に丸ごと挑戦している。この国際秩序を維持するため日本の役割は大きい」▼「歴史をさかのぼれば、恐怖感を抱いた覇権国(つまり今の米国)が過剰反応した時が危ない」▼「それではトランプ氏が大きく失敗した時にどうなるか。格差、多文化主義の問題がある。トランプの『米国ファースト』は失敗する可能性が大きいが、その後、『より狡猾なトランプ』が生まれてくるのではないか」

 

時間軸も空間の広がりも大きい。トランプ氏が最近は少し「まとも」になったなどという、当方の甘い見立てが恥ずかしくなる。

 

後半には、トランプ時代の国際秩序を論じた7つの英語論文を丁寧に説明してくれた。濃密な1時間半だった。ここには書ききれないので、ぜひクラブのサイトで会見動画を見てほしい。

 

それにしても「リベラル秩序の覇権国が変わる」となると、力むき出しの地政学世界だ。リベラル秩序を国是に戦後72年間生きた日本にどんな帰結をもたらすのか。大変なことになるぞ、という予感を残した。


ゲスト / Guest

  • 船橋洋一 / Yoichi Funabashi

    日本再建イニシアティブ / RJIF

    理事長 / Chairman

研究テーマ:トランプ政権:米国と世界の行方

研究会回数:6

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