2017年05月12日 17:00 〜 19:30 10階ホール
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会見リポート

福島 津波被災を伝えたい 上野さんの6年を追う

高橋宏一郎 (共同通信社原子力報道室長)

東日本大震災の津波で、いまだに行方不明の父と息子を捜す上野敬幸さん(44)と仲間たちの6年にわたる日々を記録した、現在進行形のドキュメンタリーである。

 

東京電力福島第一原発から北に22㌔の福島県南相馬市萱浜は、太平洋に面した田園地帯。上野さんは農家の長男で、消防団の若手リーダーだった。大津波に襲われた地元の救援活動に奔走した夜、両親と10歳の長女、3歳の長男が避難所にいないことに気付く。

 

翌日、第一原発で最初の水素爆発。政府の退避指示が出ても、消防団の仲間と捜索活動を続けた。警察や消防、自衛隊は全く姿を見せない。原発事故のせいで、福島の津波被災地は置いてきぼりにされていた。

 

がれきやぬかるみをかき分け、よく見知った近所の人たちの遺体を一つ一つ抱き上げ、集会所に安置した。長女と母も見つかり、弔うことができた。しかし父と長男が見つからない。地区では77人が犠牲になった。

 

あれからずっと捜し続けている。海辺を歩き、消波ブロックの間をのぞき、砂浜やがれき集積場を掘り返す。わが子を守れなかった悔い。「見つけてやって、抱きしめて、謝りたい」。その一心が体を突き動かした。

 

発言力と行動力に魅せられた人々がボランティアで集まるようになり、「福興浜団」というグループに進化した。全ての不明者を捜し出すと目標を掲げ、活動範囲を広げた。悲しみと絶望の地を笑顔でいっぱいにしようと、春は菜の花畑に迷路を作り、夏は花火大会を開く。

 

笠井千晶監督も上野さんの魅力に引き寄せられた取材者の一人だ。勤めていた名古屋のテレビ局を辞め、密着撮影に専念。夫人や震災後に生まれた次女の心模様にも、丁寧にカメラを向けた。津波と原発事故、福島の二重被災を知る上で必見の作。


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