2017年04月13日 16:30 〜 17:30 10階ホール
アンヘル・グリア OECD事務総長

会見メモ

OECDは2年に1度「対日審査報告書」をまとめている。グリア事務総長とランダル・ジョーンズ(Randall Jones)経済局日本・韓国課長が「2017版」を発表した。

 

司会 実哲也 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)

通訳 佐藤雅子、西村好美


会見リポート

テクノクラートの矜持

須永 野歩 (時事通信社外国経済部)

「洗練された情報分析を行えば、白か黒ではない、『あや』がある決定を下すことが可能だ」。会見中に出た、自由貿易協定(FTA)をめぐる発言だ。反自由貿易、反移民といった単純明快な政治的メッセージが世界で吹き荒れる中、かつてメキシコ高官として北米自由貿易協定(NAFTA)など複雑な利害が絡む合意にかかわった、テクノクラートとしての矜持を感じさせた。

 

日本経済の現状分析と提言をまとめたOECD対日経済審査の報告のために来日。しかし会見ではトランプ米大統領の誕生を念頭にした、自由貿易に関する発言も頻発。バリューチェーン(価値連鎖)の構築などを例に、理詰めで「自由貿易は他の選択肢より良い」と強調した。

 

一方で経済のグローバル化への「反発がある」とも。英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票で若者の投票率が低かったことなどを引き合いに、経済成長から「取り残され、不満を持つ人々」が、政治参加をせずに反グローバル化勢力台頭を許してしまうとの持論を展開。富の分配の偏りをなくしていくことが、グローバル化の「修正」として必要との認識を示した。

 

日本については、記者側の関心もあり消費税引き上げの話題が中心に。「8%から10%への引き上げは、数字的には大きな違いはないが、政治的には大きな問題」との指摘は、メキシコ財務相としての経験に裏打ちされた発言だろう。

 

会見時間の制約もあっただろうが、審査報告で日本の生産性向上のための手法として提示されたワークライフバランス改善についてはあまり触れられず、長時間労働が問題となっているだけに少々物足りなく感じた。

 

会見翌日に行った個別インタビューでは、笑顔を絶やさずにさまざまな質問に真剣に答えてくれた。謝意を示したい。


ゲスト / Guest

  • アンヘル・グリア / José Angel Gurria

    OECD / OECD

    事務総長 / Secretary-General

研究テーマ:2017年版対日経済審査報告書

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