2017年02月13日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「チェンジ・メーカーズに聞く」(14) 漆紫穂子(うるし・しほこ) 品川女子学院校長

会見メモ

曾祖母が学校創設者。経営危機の学校で改革に取り組み、7年間で入学希望者を60倍に増やした。塾を夜回りして学校をPR、一般企業とのコラボで教員、生徒の意識改革を行った。「小さくてもできることがあるうちはつぶれない。失敗、もめごとを恐れない」

 

司会 安井孝之 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

学校改革に「あきらめる」という言葉なし

安井 孝之 (企画委員 朝日新聞社編集委員)

昨年、全行程226キロのトライアスロンに参加し、泳ぎ、ペダルを踏み、走りきった「鉄の女性」である。廃校寸前の私立学校を10年足らずでよみがえらせた。その改革の道筋を振り返る語り口はまるで経営者のようだった。

 

曽祖母が1925年に「社会を支える女性」を育てるために創立した学校の6代目校長。80年代後半に他校から国語教師として品川女子学院に移った。その頃学校はどん底だった。一学年の生徒数が5人まで減り、学校の存続が危ぶまれた。

 

合否判定ランキングでは圏外の低レベル。進学塾に何度も足を運び、「とにかく受験生を送り込んでほしい」と懇願する一方で、制服を替えたり、カリキュラムを変えたりとこまごまとした改革を進めた。改革を始めた89年からの7年間で志願者数は60倍、偏差値は20アップした。

 

改革では2つの原則があったという。理念を変えないことと人を変えないこと。女子校から共学に変えたり、教師を入れ替えたりはしなかった。女子教育を充実させたいという創立の理念にこだわり、現有勢力で学校再建に取り組んだ。「組織改革の答えは現場に初めからあった」。現場の小さな成功で「生徒が喜び、教師が喜ぶ」サイクルを回していった。

 

まるで経営不振に陥った会社の再生物語のようである。

 

「人工知能にできないのは問題発見力」と言い、与えられた問題の正解を探すという従来の教育を変えてきた。今、力を入れているのは、生徒自らが社会課題を見つけ出し、企業ともコラボしながら解決策を探る取り組み。その中からNPOをつくったり、起業したりする生徒が生まれ始めた。

 

揮毫は「志願無倦(志願倦むことなし)」と書いた。目標を立てたら、飽きることなく努力する、という曽祖母の教えだ。「品川女子にあきらめるという言葉はありません」


ゲスト / Guest

  • 漆紫穂子 / Shihoko Urushi

    日本 / Japan

    品川女子学院校長 / Principal, Shinagawa-Joshi-Gakuin

研究テーマ:チェンジ・メーカーズに聞く

研究会回数:14

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