2017年02月03日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「働き方改革を問う」(2) 山田久 日本総研調査部部長・チーフエコノミスト

会見メモ

政府の働き方改革に対し「耳ざわりのよい項目の羅列」と批判する立場。賃金決定システムや女性の職場進出、育児・家事の社会化などスウェーデン・モデルを詳しく紹介した。「日本も労使主導による賃上げと生産性向上に取り組む政労使合意を締結すべきだ」。

 

司会 水野裕司 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

「日本型雇用・労働システム」のバージョンアップを

杜 雲翼 (日本テレビ報道局社会部(厚生労働省担当))

「『働き方改革』という言葉は、耳ざわりは良いが、個別政策課題の羅列に過ぎず、問題の根本構造に対する認識が示されていないのではないか」―。日本総研の山田久調査部長は、政府が進める“一億総活躍社会”のための『働き方改革』について、こう評価する。

 

『働き方改革』の中でも大きな課題は、長時間労働の是正だ。これについて山田氏は、「改革のメッセージとしての“労働時間の絶対上限”の設定は必要」とする一方で、実効性担保のためには、一定の調整期間や適用除外制度などが必要だと語った。さらに、問題の根本構造の解決には、日本型の雇用システムの在り方を改革する必要があると強調した。

 

これまでの日本型の雇用システムは、職能型(年功序列)・終身雇用を特徴としていた。山田氏は、この日本型のシステムを維持し続けることはもうできない、と指摘した上で、日本型システムの良さを残しつつも、職務型のシステムを取り入れ、所属企業が変わってもキャリアを継続できるような社会的な仕組みなどを設けることで、雇用における“ハイブリッド・システム”を構成していくことが必要だという。

 

また、緩やかな物価上昇を共有して生産性と賃金を連動させ、女性の社会進出や労働者への職業訓練・再就職支援などを行ってきたスウェーデンの事例を紹介。労働者が安心して新しい産業構造に対応できるためには、政・労・使、さらに中央銀行が足並みを揃えていくことが不可欠であること、継続的な賃上げには、中立的な専門家による委員会を設置して、客観的な分析に基づく賃上げ率の目安を発表することなどが必要だと訴えた。

 

政府は、働き方改革の実行計画を今年度末までにとりまとめる考えだ。示される計画が実効性のあるものになるかどうか―。社会全体の意識と行動にかかっている。


ゲスト / Guest

  • 山田久 / Hisashi Yamada

    日本 / Japan

    日本総研調査部部長・チーフエコノミスト / Chief Economist, The Japan Research Institute

研究テーマ:働き方改革を問う

研究会回数:2

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