2016年11月29日 13:30 〜 15:00 10階ホール
川人博 弁護士 「働き方改革を問う」① 

会見メモ

長年、過労死訴訟にかかわってきた。戦前の織物業から現代の電通まで具体例をあげて、その深刻さを訴えた。「仕事がらみの自殺は昨年2000件以上だが労災認定は4%だけ」「サービス業では『お客様は神様』が前面に出すぎ。働く者への配慮がなさすぎる」

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

なぜ彼女は死に追い込まれたのか

竹田 忠 (企画委員 NHK解説委員)

安倍政権が最重要課題として取り組む「働き方改革」。長時間労働の是正に向けて、国が本気で取り組む一歩になるかもしれない。

 

そんな見方に冷や水を浴びせるかのように発覚した、電通の過労自殺問題。入社したばかりで、未来はこれからという高橋まつりさん(当時24歳)は、なぜ、過労自殺に追い込まれたのか? 「働き方改革」を考えるシリーズ1回目は、遺族の弁護人で、長年、過労死問題に取り組んでいる川人博弁護士にご登壇いただいた。

 

際限のない長時間労働と、上司による人格を否定するパワハラが今回の過労自殺の原因と見られている。川人氏によると、これは同じ電通で1991年、やはり当時24歳の男性社員が過労自殺した時と同じ図式だという。問われているのは、人権を軽視して人をこき使い続ける企業風土だと指摘する。

 

では、どうすべきか? これ以上働かせてはならないという絶対的規制を法律で定めることが不可欠であり、そのために有効なのが、勤務間インターバル規制。EUでは、24時間につき最低連続11時間の休息時間を義務化していて、夜11時まで残業した場合は、翌日の開始は午前10時まで免除される。政府は企業の自主的な導入を推奨するにとどまっているが、義務化こそが必要と氏は訴える。

 

過労自殺は高度経済成長以降に顕在化したと見られがちだが、実は既に昭和初期、長野県下で多数発生していた。諏訪湖周辺に集中する製糸工場で働く若い女性たちが、重労働に耐えきれず投身自殺する悲劇が後を絶たず、娘たちの遺体で諏訪湖が浅くなったとまで、当時言われたという。ほとりには今も無縁墓地が残っている。

 

「労働現場の過酷な状況は、実は、戦前と今とで何も変わっていないのではないか」。川人氏のこの深刻な問いをシリーズを通して考えていきたい。


ゲスト / Guest

  • 川人博 / Hiroshi Kawahito

    日本 / Japan

    弁護士 / Attorney-at-Law

研究テーマ:働き方改革を問う

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