2016年07月25日 15:00 〜 16:30 10階ホール
小和田恆 国際司法裁判所判事 会見

会見メモ

国際司法裁判所判事を務める小和田恆さんが、国際司法裁判所の仕事や役割について話し、記者の質問に答えた。
司会 中井良則 日本記者クラブ顧問


会見リポート

ICJは一審制ゆえに長期化 下級審設置も選択肢

大石 格 (日本経済新聞社編集委員兼論説委員)

「日本の記者がひとりもいないのは寂しい」「記事にされることがないのは残念だ」。会見は国際司法裁判所(ICJ)をあまり取材しない日本メディアへの批判というか、慨嘆というか、そんな言葉で始まった。外務次官などを務めていた頃に比べて少しゆっくりになったが、相変わらず立て板に水の小和田節である。

 

南シナ海における領有権に関する質問が出ると、「答えられない」で済まさず、なぜ答えないのかを長々説明するところも、らしかった。

 

「この15年で2倍くらい忙しくなっている」。ICJの役割はますます重要になっているそうだ。審理に時間がかかるのは、ICJが一審制のため、事実認定から最終判断までのすべてを担っているからだと強調した。アジアやアフリカなど地域ごとに下級審を設け、ICJは最終判断だけをする方法も選択肢と語ったが、同時にそれで均質性を維持できるのかとの懸念も表明。口癖である「他方」を久々に聞いて懐かしかった。

 

国際社会のICJへの信頼を支えているのは「有能な裁判官の叡智」と断言した。出身国の意向に左右される判事がいるとの見方を強く否定。「米国の裁判官が米国の主張に反対することは多々ある」と力説した。

 

パワーポリティクスがものをいう国際社会だが、「国際法の支配は可能だし、長い目でみると進んできている」と話したのも印象的だった。外務省条約局長経験者だからではなく、それが信念なのだろう。


ゲスト / Guest

  • 小和田恆 / Hisashi Owada

    日本 / Japan

    国際司法裁判所判事 / Judge on the International Court of Justice

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