2016年05月20日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「オバマ広島訪問」②松尾文夫 元共同通信ワシントン支局長

会見メモ

オバマ米大統領の広島訪問を前に、『オバマ大統領がヒロシマに献花する日』の著者、松尾文夫氏が話し、記者の質問に答えた。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

オバマ氏の広島訪問を実現させた執念 さらけ出される日本の戦争へのあいまいさ指摘

安尾 芳典 (共同通信社客員論説委員)

オバマ米大統領の被爆地広島訪問を、長年訴え続け、遂にそれを実現させた。80歳を超えてもなお、精力的に訴え続けるジャーナリストの執念が実った。

 

戦後60年の2005年、日本の総合雑誌と米紙に、米大統領が広島を、日本の首相が真珠湾をそれぞれ訪れる「相互献花外交」を提案した。

 

そのきっかけとなったのが、第2次大戦で空襲を受けたドイツ・ドレスデンで米独などが合同で和解の式典だった。それをワシントンで見たテレビで知り、「ショック」を受けたという。

 

日米の間でもドレスデンのような和解の儀式が必要だと思った。そうした思いに強く駆られたのは、幼いころの戦争体験だった。米軍による攻撃に3度も遭遇し、「九死に一生を得た」。その戦争体験が、日米首脳の相互献花を訴え続ける思いの根底にあった。

 

そして日本が戦争に対し、いかにけじめをつけていないかを痛感した。その例として「進駐軍」という言葉を挙げる。英語では「OCCUPATION FORCES」、そのまま訳せば「占領軍」だ。ドイツでは進駐軍とは言わないという。

 

だから、オバマ氏の広島訪問での献花で、日本の戦争に対するあいまいさが白日の下にさらけ出されると指摘する。日本は、どうすべきか。それは、東アジアとの和解だという。

 

中国や韓国は、オバマ氏の広島訪問に納得していないと言う。日本が被害者の顔をするのが許せないと反発する中国。韓国も日本の戦争責任があいまいになると指摘する。韓国系米国人は「オバマ氏が広島で献花する一瞬たりとも、日本が被害者の顔をするのは許せない」と話したという。

 

東アジアとの和解のため、中国については日本の首相が南京や重慶を訪問し、献花するよう求める。

 

韓国に対しても、首相が従軍慰安婦に(謝罪の)手紙を送るなどすべきだと主張する。昨年の安倍晋三首相の戦後70年談話、昨年末の従軍慰安婦問題の日韓合意があったものの、依然事態は収まっていないからだ。

 

こうした東アジアとの和解に向けた大胆な提案は、現実的には実現が難しそうに思える。でも米大統領の広島訪問が実現したように、日本の首相の南京や重慶訪問も実現するのではないか。そう思わせてくれるほど、ジャーナリストとしてのすさまじい執念が伝わってくるのだ。


ゲスト / Guest

  • 松尾文夫 / Fumio Matsuo

    日本 / Japan

    元共同通信ワシントン支局長 / Former Washington Bureau Chief, Kyodo News

研究テーマ:オバマ広島訪問

研究会回数:2

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