会見リポート
2016年05月19日
13:00 〜 14:00
10階ホール
「オバマ広島訪問」①田中煕巳 日本原水爆被害者団体協議会事務局長
会見メモ
オバマ米大統領の広島訪問を前に日本原水爆被害者団体協議会の田中煕巳事務局長が会見し、記者の質問に答えた。
司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
会見リポート
オバマ訪問に期待と危惧
鶴原 徹也 (読売新聞社編集委員)
アメリカの指導者の広島・長崎訪問を一貫して求めてきた被団協だが、オバマ大統領の広島訪問については、「もろ手を挙げては歓迎できない」と言う。
理由は2つ。
1つは、大統領就任直後の2009年のプラハ演説で、米国の核廃絶を巡る道義的責任に言及し、米国の包括的核実験禁止条約(CTBT)批准を約束したのに、以後7年、批准はおろか、核政策を何ら変えていない。「裏切られた思い」を田中さんは抱く。
もう1つは、安倍政権に対する危惧。中国が台頭する中、安倍政権はオバマ訪問を日米軍事同盟強化に利用するのではないか。その場合、アジアで戦争の危険が増す。「日本は戦争をしない国。そういう私たちの願いに対し、安倍政権は反しているのではないか」。
しかし、全く歓迎しないわけではない。
「任期は半年ほどしかないが、オバマさんには大統領権限を最大限使って、先頭に立って核廃絶のステップを作ってほしい」と期待せざるを得ないからだ。
被団協として米大統領に求めてきた原爆投下への謝罪をオバマ氏には求めない。「原爆は何十万人という罪のない人々を一挙に殺した。被爆者の被害は持続している。少なくとも被爆者には謝罪をしてほしい。だが、それを強く求めることで、(オバマ氏の動きを縛り)核兵器廃絶の障害になるのであれば、ぐっとこらえて謝罪は口にしない」
複雑な胸の内だ。生存する被爆者は19万人弱。毎年1万人の割合で減少しているという。しかも、戦後70年を過ぎ、核兵器の非人間性への認識が弱くなっている。被爆者は「そんなに長く生きていられない。私どもの運動をどうやって継承してもらうか。今、真剣に検討している」と打ち明けた。
「憲法9条は理想的過ぎる、と言う人がいる。だが、理想を追い求めなければ、戦争はなくならない」
理想をプラハで語ったオバマ氏の広島訪問に、田中さんは藁にも縋る思いを抱いているように見えた。
ゲスト / Guest
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田中煕巳 / Terumi TANAKA
日本原水爆被害者団体協議会事務局長 / Secretary-General, Japan Confederation of A and H bomb Sufferers Organizations
研究テーマ:オバマ広島訪問
研究会回数:1