会見リポート
2015年12月16日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「戦後70年 語る・問う」(42) 伊吹文明 元衆院議長
会見メモ
衆院議長を務めた伊吹文明氏が「新たな価値観を創る時」というテーマで話し、記者の質問に答えた。
司会 倉重篤郎 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)
会見リポート
日米こそ歴史認識の調整を
倉重 篤郎 (企画委員 毎日新聞専門編集委員)
70年を語るシリーズのトリとして、「新たな価値観を創る時」と題して話してもらった。明治維新から70年目の日本が、国家目標だった富国強兵路線を歩み間違えたように、戦後70年目の日本もまた、少子高齢化、製造業の衰退、財政赤字という壁にぶつかっており、「米国に追いつけ追い越せ」としてきた競争・効率・成長至上主義的路線とは別の価値観が求められているのではないか。
それは例えば、勤勉、自助、助け合い、自然を畏れる心のような日本本来の美徳であり、政治が取り立てて目標を掲げるわけではないが、皆が自分の生活から探し出す知恵のようなものである。一方で、第2次世界大戦をめぐる日米間の歴史認識の差も、米国のポツダム史観的なものと日本のオリジナルな主張との間で、そろそろ調整する時期に来ているのではないか。むしろ、それは中韓との歴史認識以上に向き合うべき重要なテーマになりつつある、という。
伊吹氏は、それをどうやって実現するか、については語らなかったが、保守を自任する伊吹氏の戦後日米関係の整理という問題意識は、先にこのクラブで会見した加藤典洋氏の護憲的改憲による従米主義の克服という主張にも相通じるものがあるような印象を受けた。
伊吹氏はまた、今の安倍晋三政権について、第1次と比べ政権運営が極めてクレバーになっていると指摘、その現実主義的対応を評価した。一方で、今の安倍官邸と立法府との力のバランスについては、立法府、特に与党が弱すぎるとの認識を示し、国民から主権を預かっている立法府の憲法上の建前からしても、野党から憲法に基づいた召集要求がありながら臨時国会を開かなかったことや、時の政権が都合の良い時に使う7条解散の乱発について、「憲法の原点に戻らないと、事実の積み重なりで内閣が一方的に強くなる」と述べ、安倍政権をけん制した。
ゲスト / Guest
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伊吹文明 / Bunmei Ibuki
元衆院議長 / Former Chairman, House of Representatives
研究テーマ:戦後70年 語る・問う
研究会回数:42