2014年12月19日 15:00 〜 16:30 10階ホール
待鳥聡史 京都大学大学院教授 研究会「衆院選後の日本-民意をどう読むか」

会見メモ

12月14日投開票の第47回衆議院議員選挙の結果を、京都大学大学院の待鳥聡史教授が分析した。

司会 倉重篤郎 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

「世論調査に各社もっと独自性を」松本氏 「政権が目指す方向に進むのが民意」待鳥氏

主要政党の議席数が選挙の前後でさほど変わらず、人々の記憶にあまり残らなそうな衆院選をどう分析するか。当クラブではおなじみのふたりが、今回も興味深い視点を提供してくれた。

 

埼玉大学の松本教授の話は「衝撃の告白」から始まった。投票したい政党を見いだせず、「白票」を投じたというものだ。後半の質疑部分で、この投票行動を批判する意見も出たが、是非はさておき、これほど今回の選挙の特徴を言い表す話はあるまい。

 

個別政策ではいろいろ反対はあっても、全体としてみると安倍政権の継続以外の選択肢が見つからない「四分六分感覚」という総括はおおかたの見方と同じだろう。

 

選挙を一過性のイベントにしないためには衆院解散から投票日までの期間をもっと長くする必要があると訴えた。こちらは「政治空白を長引かせるな」と考える人の方が多数だろうが、選挙期間中も首相が不在なわけではないし、まずは小規模な選挙で実際に試す価値はありそうだ。

 

世論調査に関しては携帯電話にかけていないことにばかり目をとらわれているが、固定電話も振り込め詐欺対策で留守電対応が増えてアクセスが難しくなっているなどの新たな状況を指摘した。

 

信頼性では郵送方式が一番であり、どのやり方に軸足を置くかで報道機関ごとにもっと独自性を出すべきだとの意見は傾聴に値する。

 

京都大学の待鳥教授は、今回の選挙で与党の小選挙区と比例代表における議席占有率の差は2年前よりも小さくなっており、「小選挙区制という制度に助けられた勝利」という要素は小さくなっている、と語った。同時に、自民党の獲得議席数が減ったことを安倍政権が後退したかのように言うのは論外、との見方を示した。

 

最も強調したのは、政権選択の選挙である衆院選で勝利してできた政権が目指す方向に進むことが民意であり、そうすることで次の衆院選における業績評価もしやすくなるという点だ。

 

政権が途中で軌道を修正すると、もともとの政策が的外れだったのか、中途半端になったことで効果が出なかったのか、が分からなくなる。参院選や地方選の結果を「直近の民意」と称して政権に方向転換を迫るのは適当ではない。これらの説明は政治の理想論としてその通りであるが、安倍政権の暴走を防ぐのがマスコミの役割と思っている人には受け入れられないのだろう。

 

安倍政権は今回の民意の後押しを有効に活用できているのか。次回は政策の遂行度への評価などを聞いてみたい。

 

日本経済新聞論説委員兼編集委員 大石 格

 

*この会見リポートは、松本正生・埼玉大学教授会見(12月17日開催)との統合版です。


ゲスト / Guest

  • 待鳥聡史 / Satoshi Machidori

    日本 / Japan

    京都大学大学院教授 / Professor, Kyoto University

研究テーマ:衆院選後の日本-民意をどう読むか

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