会見リポート
2013年07月16日
12:00 〜 13:15
10階ホール
谷川浩司 日本将棋連盟会長 昼食会
会見メモ
6月に再任されたばかりの日本将棋連盟の谷川浩司会長が会見し、将棋の普及やコンピューター将棋の問題などについて話した。女性、特に女子に将棋が普及してきているのが最近の特徴だという。こども将棋大会で、以前は100人の参加者のうち女子は1人だったのが、いまや10人ほどになってきている。将棋を指さないが、イベントに参加したり、対局を見たり、将棋文化を学んだりする、女性ファンも増えてきている、とも。
コンピューター将棋ついては、4月に行われた電王戦のように、こんごもプロとの対局は行われていくことになるだろう、と述べた。現在、両者の力が拮抗しているので、5年待ってコンピューターが一方的に進化していくよりは、対局を続けていく方が、将棋界にとってメリットがあるのでは、と。
司会 面出輝幸 日本記者クラブ監事(神戸新聞東京支社長)
質問 山村英樹 東京将棋記者会幹事(毎日新聞学芸部編集委員)
日本将棋連盟のウェブサイト
会見リポート
谷川将棋人生の大局観 いまだ健在
近藤 憲明 (元毎日新聞論説委員)
35年前、谷川さんを神戸市のご実家で取材したことがある。高校1年生で6段だった谷川少年は周囲から将来の名人と騒がれていた。駆け出し記者の私は、将棋好きのデスクから「将棋の強さって何か、の質問だけは外すな」と忠告された。この質問に少年は動じる風もなく「大局観ですね」と即答した。へぼ将棋の私でも「こりゃ確かに天才少年だわ」と感じ入った。立ち居振る舞いも流れるような優雅さがあり、能の舞いを見ている感じだった。年齢を詐称していると疑いたくなる落ち着きがあった。
35年ぶりに同じ質問をしてみた。51歳になられた日本将棋連盟会長は「やはり大局観ですね」と答えづらそうだった。この間、名人位に史上最年少で就き、数々のタイトルを奪取した。最短距離で詰ませる「光速流」に多くの将棋ファンが熱狂した。
ところが、最近タイトルに縁遠い。自分のことだけを考えていればいい勝負師時代と違って、組織の運営にも心を砕く股裂き状態が影響しているのか。谷川さんがこのまま終わっていいはずはない。「40歳を過ぎると記憶力が衰えてきた。研究したことを整理するのが難しくなった。でも年齢に応じた戦い方があるはずです。知識や情報に頼るのではなく、前例のない展開に持ち込み、経験が生きるような指し方です。ねじり合い、力勝負の将棋で活路を見いだしたい」。中・終盤のねじり合いでは若い者には負けないぞ、の気迫は一向に衰えていない。谷川将棋人生の大局観はまだまだ健在なのである。
コンピューター将棋ソフトが現役プロ棋士を負かしたことが話題になった。「コンピューターは感情がないので気持ちが折れない。疲れも知らない。生身の人間とそこが違う」と、棋士とソフトの力が拮抗していることを認めた。
ゲスト / Guest
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谷川浩司 / Koji Tanigawa
日本将棋連盟会長 / Chairman of Japan Shogi Association