2013年03月07日 14:00 〜 15:30 10階ホール
著者と語る『カウントダウン・メルトダウン』 船橋洋一氏

会見メモ

船橋洋一(日本再建イニシアティブ理事長)さんが『カウントダウン・メルトダウン』執筆のきっかけや動機などについて語った。

主なきっかけは、①「最悪シナリオ」(近藤駿介・原子力委員会委員長作成)と②NRC(米原子力委員会作成)の活動記録(11年3月11日~16日)を手に入れたことにあるとした。

①は11年12月に全文を入手した。プロデューサー役を務めた民間事故調の報告書の締切り直前だったため、自分で解説を書き、シナリオを報告書の巻末に加えた。報告書発表(12年2月28日)後に近藤委員長に長時間インタビューした。そこで委員長が深刻な事態を意識していたことを確信し、これを再構築しなくてはならないと思った。

②は黒塗りの部分が多く、証言などをつなぎあわせて全体像を把握するようにした。米側からみたもので、公になっているものがなく、これを使うことで事故対応の再構築ができると考えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 川村晃司(テレビ朝日)

日本再建イニシアティブのページ

http://rebuildjpn.org/


会見リポート

日本の危機管理 情緒的なメルトダウンが起きていた

川村 晃司 (企画委員 テレビ朝日報道局報道企画部コメンテーター)

「同盟国は助けてはくれるが、運命をともにしてはくれない」(ドゴール元仏大統領)という言葉が示すように、アメリカによる「トモダチ作戦」の実態は日本への救世主のようなものではなかった。放射能汚染の危機的な状況を独自のシミュレーションで予測した米海軍(海軍原子炉機関)は横須賀基地と東京からの撤退を主張する。日米協力関係の観点から残留をと主張する国務省との対立。

一方、米原子力規制委員会(NRC)から日本に派遣された支援部長は3月15日に東京に到着するや、真っ先に東電本店で勝俣会長に会う。勝俣会長はこのとき、英語で一言「Help me」と述べ、「Help us」とは言わなかった。

この意味が東電という「たこつぼ組織」のばらばら感にあることを米原子力規制委員会が感じとるまでの経過など…日米の権力中枢で福島原発事故をめぐり何が起きたかを歴史的ノンフィクションとしてまとめた。

著者は民間事故調の検証報告書をプロデュースした後、最悪なシナリオの存在を入手。幻の総理談話を書いた人物をはじめ、日米の当事者300人余りに直接取材する中で、日本という国のリスクマネージメント・リスクコミュニケーションにおいて日本国内で情緒的なメルトダウンが起きたのではないかと指摘する。

「真実は熱いうちにつかめ」という取材スタイルは容赦ない。「SPEEDI」を文科省が公開しなかったのは、データを公表して結果が間違っていたら…という官僚特有の「消極的権限争い」(責任回避)があった、と官僚たちの会話が生々しい。

質疑では、菅首相が東電に乗り込み原発現場からの撤退を阻止した行動力は賞賛されてしかるべき、と答えたのも検証取材の結果であろう。なお、ノンフィクションの書き方として政治家には原稿をチェックさせない、との発言は、若い記者へのメッセージとうけとめた。


ゲスト / Guest

  • 船橋洋一 / Yoichi FUNABASHI

    日本 / Japan

    日本再建イニシアティブ理事長 / Chairman, Rebuild Japan Initiative Foundation

研究テーマ:著者と語る『カウントダウン・メルトダウン』

前へ 2024年03月 次へ
25
26
27
28
29
2
3
4
5
9
10
11
12
16
17
20
23
24
30
31
1
2
3
4
5
6
ページのTOPへ