2012年09月04日 15:00 〜 16:00 宴会場(9階)
佐藤和孝 ジャパンプレス代表 記者会見

会見メモ

シリアでジャーナリストの山本美香さんが殺害された事件について、ジャパンプレス代表の佐藤和孝さんが、シリア大使館に真相究明を求める要望書を提出した後、日本記者クラブで会見し、記者の質問に答えた。

司会 中井良則 日本記者クラブ専務理事

要望書PDF(和文)

http://www.jnpc.or.jp/files/2012/09/613863fb626224740f7706341ce08a86.pdf

要望書PDF(英文)

http://www.jnpc.or.jp/files/2012/09/Request-for-Embassy-of-Syria-Arab-Republic.pdf


会見リポート

経験したことがないような戦場

西岡 省二 (毎日新聞外信部副部長)

激しい内戦が続くシリアの北部アレッポで8月20日、日本のジャーナリスト、山本美香さんが銃撃され、死亡した。現場で行動をともにしていた佐藤和孝氏(独立系通信社ジャパンプレス代表)は、日本記者クラブでの記者会見に、黒いスーツ、黒ネクタイ姿で臨んだ。戦場取材に臨む記者はどうあるべきか。重い空気の中、質疑が交わされた。

「取材と安全」を考えさせられる内容だった。2人はシリアでの取材に際し、政府のビザではなく反体制派「自由シリア軍」による「入国スタンプ」で入った。佐藤氏は、取材対象がシリア政府と反体制派の双方だったとし「政府のビザが出なかったため、まず反体制派側から取材に入った」と説明した。結果的に政府軍から敵視される形となった。

佐藤氏は今回の現場を、経験したことがないような戦場だった、と振り返った。過去に取材した戦場は敵との境界がはっきりしていたが、今回は「日常とさほど変わらない風景が一変した」という。

その瞬間、「相手が撃ってくる」と殺気を感じ、体を反転させて身をかがめ、全速力で走った。背後で自動小銃の音が鳴った。「当たる」と思ったが無傷だった──。

「これをどう解釈してよいか分からない」という。取材の安全管理は佐藤氏が担当した。だが山本さんは亡くなった。「死なせた責任は、すべて私にある」。佐藤氏はこう繰り返した。

今後も戦場に行くか。この問いに「世界で今でも、だれかがどこかで殺されている。どんな場所で、なぜそうなるのか伝えたい」と答えた。

佐藤氏の話を聞きながら、かつて先輩記者から教わった言葉を思い出していた。

「周到な準備と、スクープをあっさり諦める勇気が危険に巻き込まれる可能性を低くする」。すべては現場での記者の判断である。

ゲスト / Guest

  • 佐藤和孝 / Kazutaka Sato

    ジャパンプレス代表 / Representative, THE JAPAN PRESS Inc.

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