2012年07月25日 13:00 〜 14:00 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」 畑村洋太郎 政府事故調委員長

会見メモ

7月23日に最終報告書を提出した東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調)の畑村洋太郎委員長が会見し、記者の質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 神志名泰裕(NHK)

政府事故調のホームページ

http://icanps.go.jp/


会見リポート

学ぶための調査 責任追及はしない

三島 勇 (読売新聞調査研究本部主任研究員)

畑村洋太郎・東大名誉教授は失敗から教訓を学び取る「失敗学」の提唱者。「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」の委員長を務め、9人の委員と現地調査や関係者からの聞き取りなどをもとに事故と被害の原因を追及し、7月23日に最終報告書をまとめた。


畑村氏は「100年後の評価にも耐えるものを作りたいと始めた。多くの人に報告書を読んでもらいたい」と訴え、最終報告の概要を説明した。まず、過酷事故となった福島第一原発と冷温停止した福島第二原発を比べ、「第二原発では事故の全体像をつかんでいたが、第一原発はそうではなかった」と福島第一原発の事故対処に問題があったとした。


次に、政府や地元自治体が判断し行動するために必要な情報が東電などから伝達されなかった点を挙げ、「首相の判断、行動に不適切なことが多々あったが、その原因には情報が伝えられないことやサポートがなかったことがあった」と関係行政組織の脆弱さを批判した。放射性物質の拡散を予測する「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」が役立たなかったが、「十分な入力情報がなくても避難に有効に使えたはずだ。(関係機関が)社会が何を求めているかが分かっていない」とも述べた。


こうして事故を分析した上で、抜本的な事故防止策の構築や地震・津波・原発といった複合災害という視点の欠如などを重要論点として整理したと語ったが、「事故は続いている。調査は継続していく必要がある」と強調した。畑村氏は「責任追及はしなかった。同じような事故が起こらないように学ぶべきものを学ぶための調査だった」と締めくくった。教訓は学び取った。しかし、未曽有の被害を与えた事故の責任はだれがどうやって追及していくのだろうか。



ゲスト / Guest

  • 畑村洋太郎 / Yotaro Hatamura

    東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会(政府事故調) / Chairperson, the Investigation Committee on the Accident at the Fukushima Nuclear Power Stations of Tokyo Electric Power Company

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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