1998年01月13日 00:00 〜 00:00 10階ホール
トニー・ブレア・イギリス首相

会見メモ

ブレア首相は、若さと自信にあふれていた。二年前、初来日の際のクラブ会見での「首相になってここに帰ってくる」との約束をはたした彼は、政権をねらう豹のような鋭さより、リーダーシップを確立して大政治家への道を歩もうとする余裕と力強さを感じさせたのである。

会見の冒頭で、日英関係の強化についてかなり詳細に述べたのは当然だった。訪問国への礼儀であるうえ、今年四月にはASEM(アジア欧州会議)がロンドンで開かれ、五月には天皇のご訪英もあり、日英関係がクローズアップされるからである。

とりわけ捕虜問題で、日本政府の態度に満足すると発言したことは、今後の日英関係をよりスムーズにするだろう。捕虜問題は、日英関係の“ノドにささった骨”であり、五月の天皇訪英で再び問題化する恐れがあるからである。

ブレア首相は、常に「自分の言葉」で説明した。官僚が書いた答案にもとづくものでなく、自分がリーダーとしてどう考えるかについて語った。だから言語も意味も明瞭だった。しかし、答えにくい問いを巧みに避ける術も体得していた。議会答弁で野党側と常に丁々発止とやってきたからであろう。

たとえば、“ニュー・ブリテン”を目指すブレア改革で、所得税も上げずに教育や福祉の改革が可能なのか、との質問に、いまいかに教育改革に取り組んでいるか、との説明に終始した。息子の麻薬問題で窮地に立たされた内相更送問題に関する質問にも、単一通貨、日英問題などもっと大きな問題があるとかわしたのだ。

ただ、「分裂する日本の野党へのアドバイスは?」との場違いな質問には、「野党の分裂は与党にとっても利益にはならない」と一般的な答えでかわした。本当は、野党保守党が単一通貨問題で分裂している現状をほくそ笑んでいるのではあるまいか。

毎日新聞社編集委員
黒岩徹

日本記者クラブ会報1998年2月号4ページから引用)

会見音声


ゲスト / Guest

  • トニー・ブレア / Tony Blair

    イギリス / UK

    首相 / Prime Minister

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