取材ノート
ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。
住民目線の報道 続ける(中内 風花 新潟日報社柏崎総局)2025年3月
真っさらで広大な土地に、真新しい建物や建設現場が点在する一方、宿泊先の隣の空き地には、表札が掲げられたブロック塀だけが取り残されている―。福島県の浜通りには、あの日から少しずつ歩みを進めながらも、まだまだ復興の途上であることを物語る風景が広がっていた。
東京電力福島第1原発の構内も同様だった。1号機では、がれき撤去を進めるための大型カバーの設置が進められていたが、いまだ水素爆発による痛々しい痕跡がむき出しになっていた。
カバーの完成は今夏を見込んでおり、爆発後の姿はまもなく見えなくなる。しかし、がれきの撤去、使用済み核燃料の取り出しなど、1号機だけでも作業は山積みだ。1~3号機に計880㌧あるとされる溶融核燃料も、現状は1㌘にも満たない量しか取り出せておらず、今後も試験的な採取が続く。
東電の担当者が神妙な面持ちで口にした「諦めるわけにはいかない」のひと言に、ひとたび事故が起きたときの代償の大きさを感じた。
新潟県では東電柏崎刈羽原発の再稼働問題で、地元同意が焦点となっている。住民の理解を得るため、国が県内各地で説明会を開く異例の対応もなされたが、依然として事故時の避難や原発の安全性に対する不安の声が聞こえてくる。「本当に安全なのか」。住民目線に立った報道を続けることが重要だと、福島を訪れ、改めて強く感じた。