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本当の「復興」とは何か(文 基祐 北海道新聞社報道センター)2025年3月

 復興とはなんだろう―。その問いが頭から離れなかった。

 東京電力福島第1原発の原子炉建屋の大半は、カバーで覆われていた。むき出しの鉄骨など、苛烈な事故の面影は見えなくなりつつある。同時に、大量の溶融核燃料(デブリ)が目と鼻の先に確かにあることが伝わってきた。

 原発敷地内は大量の処理水タンクや固体廃棄物貯蔵庫などが幅をきかせる。敷地を出れば中間貯蔵施設が並び、原発とその周辺は巨大な核のごみ置き場のように映った。

 廃炉に向けて1日4500人を超す作業員が出入りし、その7割は地元雇用だという。産業の乏しい地域にとって、原発は事故後も欠かせない存在であり続けている。

 だが、廃炉が実現すれば多くの人が職を失い、国の交付金もどうなるのか。地域に強い依存を生む国の原発政策の罪深さも改めて実感させられた。

 福島原発に入る前日に訪れた福島県川内村は「復興のフロントランナー」だという。復興事業で整備した小中一貫校などは商業施設と見間違えるほどにきれいだった。原発事故直後に全村避難した村民の帰還率は約83%にも上るという。

 だが、産業育成などに苦慮し、住民基本台帳人口はこの14年間で約30%減少。高齢化率は約56%と限界集落化が進む。復興のフロントランナーとの言葉は正しいのだろうか。

 本当の意味での復興に資する報道をしたい、そう強く思った。

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