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私の8月15日 玉音放送と汁粉(今井 久夫)2015年8月

1945年8月15日はまだ慶応大学理工学部応用化学科の3年生だった。終戦の日は死ぬ覚悟だった。ただし痛くない死に方をしたい。それがせめてもの願いだった。

 

さてその日が来た。いつものように何もないままに過ぎていった。何だか申し訳ないような、きまりが悪いような気がしてならなかった。ひとりで照れていた。

 

願いといえばもうひとつ、汁粉がハラいっぱい食べたい。しかし叶わぬユメと諦めていた。天皇玉音を聴いていて、目の前に汁粉の山が現れたような気がした。放送の中身はとにかく、頭の中で汁粉がぐるぐる回っていた。それで終わりだ。人間とは他愛のないものだ。その時つくづく思った。しかし、顔はニコニコしていたに違いない。

 

(産経新聞出身、94歳)

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