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回廊が結ぶメコン流域圏――リスク嫌う日本企業(団長:中井 康朗)2008年2月

  日本記者クラブの第7回アジア取材団は、2月23日から3月2日までの日程で、カンボジア、タイ、ラオスを訪れた。東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する3カ国は、 「東西経済回廊」など幹線陸路の整備とともに豊かな経済発展性が語られるようになったメコン川流域圏に位置する。

 無論、それだけで将来が保証されたことにはならない。ならば、どんな課題を抱えているのか。政治的安定は保たれているか。各地の息づかいに耳をそばだてながら、政府要人 との会見、日系企業の視察、各国駐在の日本大使や商工会議所幹部らとの懇談と、取材は続いた。

  密度の濃い日程が組まれた。そのうち、緊迫した雰囲気の中で行われたサマック・タイ首相との会見など、各国要人との会見について報告しておきたい。
 
  タイ新政権が発足してひと月足らずだから、ちょっとしたニュースが 出てくる可能性もある。そんな淡い期待はあった。しかしいざフタを開けてみると、亡命中のタクシン元首相の帰国を翌日に控えての会見。このタイミングは想定外だった。
 
  バンコク駐在の各社特派員がオブザーバー席で見守る中、取材団メンバーたちから、タイの政治記者も顔負け(?)の鋭い質問が矢継ぎ早、首相に浴びせられた。
 
 現在、ラオス人民革命党内での序列こそ6、7位だが、将来、ラオスの第一人者になるものと期待されるブアソン首相との会見では、その率直な語り口が印象に残った。
 
 プラシット・カンボジア商業相の言葉も印象深かった。「日本企業は、カンボジアにまだ多くの地雷が埋まっていると思っているようですね」。日本企業の進出のペースが鈍いことへの不満を精いっぱい表現したものだろう。
 
 一人当たり国内総生産(GDP)でみれば桁が違うタイと、カンボジア、ラオス両国を同列に論じるわけにはいかない。しかし、タイでは相変わらずの優位を保っている日系企業が、経済規模が小さいカンボジアとラオスに関しては、意欲的な活動を展開する中韓企業に後れを取っている。リスクを嫌う日本企業の姿を、「成熟」と評していいのかどうか、少し考えた。   

                                (日本記者クラブ会報2008年4月号から転載)

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