ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。


第7回(カンボジア、タイ、ラオス)回廊が結ぶメコン流域圏(2008年2月) の記事一覧に戻る

カンボジア・ヒルズ(赤間 清広)2008年2月

  ぴかぴかに輝く真新しいバイクと車が街中にあふれる光景は、まさに圧巻だった。取材団が訪れたカンボジアの経済成長率は年10%に迫る。低成長にあえぐ日本を尻目に、高度経済成長の大きな波が暗い時代をくぐり抜けた新興国を巻き込もうとしていた。

  それを象徴するのが、首都プノンペンで初となる高層ビル計画だ。韓国企業が建設する「ゴールドタワー42」がそれで、その名の通り、42階建てのツインタワーが2011年にも完成する。

  商業施設やスポーツクラブ、オフィス棟などが入居する「カンボジア版・六本木ヒルズ」。高くても10階程度のビルしかないこの国では、嫌でも目立つ建物になる。事実、ゴールドタワーの「居住棟」は、予約販売の段階で資産形成を狙うカンボジアのセレブたちに買い占められているという。

  しかし、光の裏には常に影がつきまとう。「ここ数年で市街地の土地価格が急騰している。ちょっとしたバブルだ」。日本大使館の関係者がささやいた。

 土地を買い漁っているのは、主に中国、韓国などの外国企業。ようやく成長のとについたばかりのカンボジアの一等地を真っ先に外資が買い占め、にわかに生まれた地元の「土地成り金」がゴールドタワーに殺到する--。

 経済の足腰がまだ強いとは言えないカンボジアで、投機熱だけが高まる光景には、やはり危うさが漂う。

 サブプライム問題で米国経済が風邪をひいた。影響は徐々に世界へ広がっている。カンボジアの高成長に陰りが見え、投資先としての魅力が薄れれば外資は一気に引き上げるだろう。その時、この国はどうなるのか。

 再びゴールドタワー。「ビルのオープン前に居住棟が完売し、建設主の韓国企業は既に元をとったらしい」と日系メーカーの駐在員。別の駐在員は「そもそもプノンペンに42階建てのビルを建てるほどの需要があるとは思えない。損をするのは結局、将来の値上がりを期待して購入した地元の人たちだ」と心配する。

 ど派手なビルの完成予想図が据え付けられた建設地前の大通りを、ぴかぴかのバイクが猛スピードで次々と駆け抜けていった。大半がノーヘルだ。転んだら、と見ている方がひやひやする。

 新興国の経済成長に、外資の力は欠かせない。しかし、その折り合いが難しい。株価の浮沈を外国人投資家に頼る日本にとっても、人ごとではない。プノンペンの喧噪はいろんなことを教えてくれた。

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