会見リポート
2025年09月25日
14:00 〜 15:30
9階会見場
「中国で何が起きているのか」(30) 岡本隆司・早稲田大学教授
会見メモ
中国の習近平国家主席は9月3日の「抗日戦争勝利80年」を記念する軍事パレードで、ロシアのプーチン大統領や北朝鮮の金正恩総書記らと天安門の楼上に並び立ち、世界を驚かせた。「中華民族の偉大な復興」を掲げる習氏は4000年に及ぶ中国史のなかで、どのような指導者と位置づけられるのか。東洋史・近代アジア史を専門とする早稲田大学の岡本隆司教授が、「中国で何が起こってきたのか」と題し、中国伝統社会、経済の歴史的な特質を含めて話した。
司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員 (日本経済新聞社)
会見リポート
中国の領土主権回復の動き どう向き合うか
川瀬 憲司 (日本経済新聞社編集委員)
自らを「歴史オタク」と称した早稲田大学の岡本隆司教授は「中国で何が起きているのか」シリーズで登壇しながら、記者会見の冒頭でこの命題には「答えられない」と述べた。しかし実際には、「歴史オタク」ならではの視点から、現代中国の主要テーマである領土主権について切り込んだ。
中国にとってこの百年は「バラバラになった中国を1つにする」過程で「現在進行形」と認識する岡本氏。2020年以降の香港が「一国二制度」から「一国」になってしまったのも、習近平指導部が掲げる「中華民族の偉大な復興」もその流れの中にある。
どこまでが1つにすべき対象なのか。岡本氏が指摘する中国の特徴は「名前をつけて、それが自分に属していると認識した時点で自らの領土」という独特の論理だ。この観念を「近代的に読み替える」ことで、現在の国際法体系に「スライド」させている。
「実効支配」の有無は関係なく、台湾や南シナ海全域なども自分のものという主張につながる。「自治区」として実効支配が続く新疆やチベットは「核心的な利益」で「バラバラにされては困る」地域だ。
一方、ロシアには広大な領土を奪われたままで、モンゴルも独立した。両国との国境は確定しており「軽々に動かすことはできない」としつつも「中国のものだと思っていてもおかしくない」。
こうした意識は「中国側のロジックからすると自然」なのかもしれないが、現代の国際法の基準に照らすと「納得のいかないことが多い。そのギャップがずっと対立の原因」と分析する。中国からすると統一すらできていないとの思いなのだろうが、統一しようとする中国の動きが、西側や周辺諸国には拡張主義的で「脅威を感じている」状況だ。
とはいえ、対立の構図は当面は続く。中国の隣人である日本は「引っ越せないので、よろしくやっていくしかない」。
ゲスト / Guest
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岡本隆司 / Takashi OKAMOTO
早稲田大学教授
研究テーマ:中国で何が起きているのか
研究会回数:30