2025年04月15日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「『コメ』はいつまで主食かー価格急騰を考える」(2) 小川真如・宇都宮大学助教

会見メモ

シリーズ2回目の登壇者として、小川真如(まさゆき)助教が会見した。

冒頭、「なぜコメの価格が急騰したか」・「コメはいつまで主食か」という2つの主題に触れ、前者については、「2023年度米の争奪戦の影響・余波が今も続いている」とし、昨年10月末時点で、政府は備蓄米放出の検討に対する言及をすべきだったと考えを示した。

後者については、「①高値でも消費者が米を買う」、「②国が主食であることを理由に米を特別扱いする」、「③コメの代替となる主食が台頭しない」「④コメに適した風土のままである」「⑤コメを軸とした食文化が残っている」という5つの要因がなくならない限り、コメは主食であり続けると回答した。

その他、コメ農家の所得向上が重要になっている理由と課題など、政策側・消費者・生産者といった各立場から、多岐にわたる論点に落とし込んで解説した。

 

司会 西山公隆 日本記者クラブ企画委員 (朝日新聞社)


会見リポート

「犯人捜し」に安心求めるな

佐藤 庸介 (NHK解説委員)

 連日、コメを巡るニュースが飛び交う中、気鋭の専門家の登壇となれば、高騰の理由を明快に説明してくれるとつい期待してしまう。だが、特定の「犯人」を見つけて納得するのは「安易なカタルシスなので注意が必要だ」との言葉に考えさせられてしまった。

 確かにコメ政策は、過去、問題になるたびに手が入れられ、「毎年毎年、増改築を繰り返してきた」。結果、専門家も説明できないほど複雑な仕組みになったのはあしき実例だ。

 とはいえ、需給問題にも丁寧に答えていただいた。もっともふに落ちたのが、農林水産省が備蓄米放出の「出口」を設定していなかったのではないかという指摘だ。政策効果を測る尺度が不明瞭だったため、値下がりするかどうかが焦点になってしまった。担当者たちは価格への介入を避けんがために備蓄米の放出を渋ってきたのに、結局は価格がターゲットになってしまったのはあまりに皮肉だ。

 一方で、秋以降は十分供給されると楽観的な見方を示したのが印象的だった。価格高騰を受けて、農家が丁寧な生産を行うと期待できるという。むしろ、価格が落ち着いた後、国民が関心を失うという懸念には強い共感を覚えるとともに、報道の常として自省せざるを得なかった。

 「小さじ一杯の変化で状況が大きく変わる」。途中、ひとさじのコメを示した時、とりわけ語気が強くなったように感じた。〝消えた〟と話題になった量とほぼ同じ20万㌧は、国民1日あたり小さじ一杯にすぎない。この問題提起に、これまでコメ消費を減らし続けてきたのに、気まぐれに騒ぎ立てる国民へのいら立ちを感じた出席者も多かったのではないか。

 ランチにそばを食べた自分を思いながら、コメ問題に「一時的に対処するのではなく、引き続き考えていくことこそが重要だ」との言葉を胸に刻んだ。


ゲスト / Guest

  • 小川真如 / Masayuki OGAWA

    宇都宮大学助教 / Assistant Professor, Utsunomiya University

研究テーマ:『コメ』はいつまで主食かー価格急騰を考える

研究会回数:2

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