会見リポート
2025年03月19日
13:00 〜 14:30
10階ホール
「トランプ2.0」(5) 保守系シンクタンク アメリカン・コンパス設立者 オレン・キャスさん
会見メモ
米国のバンス副大統領やルビオ国務長官らが上院議員の時代から政策助言を行ってきた。プロジェクト2025にも関わっており、改革保守派の若手論客として知られる。トランプ氏を支持する知識人がなぜ安全保障や経済・貿易システムを変革しようとしているのか、その背景となるアメリカ社会の変化、彼らが国際社会に期待していることについて、自身の研究に基づき解説した。
「アメリカにとって冷戦後の体制はよいものとは映っていない。自由主義国際秩序による恩恵を受けていなく、ならば自国の利益を追求すべきとなる」。
貿易では不均衡の是正を、安保では「防衛費をGDP比で何%にするということではなく、自らを確実に防衛できるようにし、同盟全体に貢献できるようにすることを求めている」。対中国では共通のアプローチを求めており、安保だけでなく経済の面でも「中国との距離、分離状況をとることが必要」。
日本への来日は初。国際交流基金が招へいした。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信社)
通訳 西村好美 サイマル・インターナショナル
会見リポート
崩壊社会再生へ米共和新生
北井 邦亮 (時事通信社外信部編集委員)
ルビオ米国務長官やバンス副大統領、保守穏健派とされるロムニー前上院議員に近い共和党「リフォーモコン」(改革派保守)の論客。ポピュリズムの潮流に乗って権力集中を図るトランプ大統領について、旧来の制度を破壊する役割を担うが「新たなビジョン」を抱いて登場したわけではないと評し、労働者階級の救済を軸としたポスト・トランプの「新生共和党」の政策構想を語った。
まず現状認識だ。家族を維持し子供を養育する力を失う「極めて深刻な社会的衰退」に米国は直面している。製造業は崩壊寸前だ。医療用麻薬オピオイド中毒死や自殺という「絶望死」の増加で平均寿命は低下し、高等教育制度は機能していない。
危機にある米国にとって、世界はどう見えているのか。リベラルな国際秩序は恩恵をもたらしてこなかっため「より効果的に米国の利益を促進する方法を見出す必要がある」
一連の課題への処方せんとしてキャス氏が示した政策は内向きで、小さな政府を志向してきた従来の共和党の路線と異なり、公的部門の役割を重視する。関税により国内市場を保護し、移民制限で労働者を守り、政府が旗を振って産業の国内回帰(再工業化)を図り、社会保障を充実させる。外交・安全保障政策は貿易と一体的に捉えられ、同盟国に自助努力と中国との決別を迫る。
急進左派のサンダース上院議員は、昨年の大統領選で「労働者から見捨てられた」民主党が敗北したのは必然だと述べた。労働者救済は民主、共和を問わず米政治の焦点になっている。そこでは外交は完全に内政の延長となり、同盟関係は「米国が国内で達成しようと考えているビジョンを支持する」(キャス氏)方向を向いていなければならない。
果たしてそれは健全で対等な同盟と言えるのか。危機の米国と向き合う難しさを予感させた。
ゲスト / Guest
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オレン・キャス / Oren Cass
保守系シンクタンク アメリカン・コンパス設立者 / the founder and chief economist of American Compass
研究テーマ:トランプ2.0
研究会回数:5