会見リポート
2025年03月06日
14:00 〜 15:00
9階会見場
「自治体消滅にあらがう」(6) 久元喜造・神戸市長
会見メモ
シリーズ6回目のゲストとして、久元喜造・神戸市市長が登壇。
持続性の高い街づくりに向けて、神戸市が実際に取り組んでいる事例を、都心部、郊外・既成市街地、森林・里山という3つのポイントに分けて説明した。
30年前に発生した阪神淡路大震災による街づくりへの影響にも焦点をあて、「震災がなかったらできたであろう街づくりがようやくできるようになってきた」と述べた。
また、都市を活性化させていくために、「人口」・「新設住宅着工数」という指標を脱却し、「空き家の解消」・「合計特殊出生率」の改善に向けた議論にシフトしていく必要があると話し、人口減少社会における都市政策のあり方についても言及した。
司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員 (時事通信社)
会見リポート
「人口減前提の都市経営を」
名倉 あかり (神戸新聞社東京支社)
都心部と自然豊かな里山が近接し、海と山に囲まれた立地が特徴の神戸市は、2020年の条例改正で都心部でのタワーマンション(タワマン)建設の抑制を始めた。久元喜造市長はマンション建設などにより短期的に人口を増やすのではなく「人口減少を前提とした都市経営をしていくべきだ」と強調。全国的には需要拡大で住宅建設が相次ぐ中、他都市とは一線を画した街づくりを進めている。
タワマンは建物の規模が大きく、住民も多い。規制の背景には、老朽化した際の建て替えや修繕で合意形成が難しく、将来廃虚化するのではないかとの懸念がある。また、住宅ではなく商業・オフィスの機能を拡充し、都市としての魅力を高めたい狙いもある。改正以降、タワマンの建設は行われていないという。
神戸は1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けた。「取り組むべき街づくりに遅れてきた」と久元市長。市は「再生」をキーワードに、郊外駅周辺の再整備や都心部への企業誘致などを進め、タワマンに頼らない「真に持続可能な大都市を目指す」としている。
市の人口は2011年にピークを迎え、2023年10月には22年ぶりに150万人を割り込んでいる。久元市長は都市の活力の指標として、従来の人口や住宅数ではなく、「空き家の解消率、合計特殊出生率の改善に議論をシフトしていくべき」と持論を語った。
人口減は神戸市に限らず、全国的な傾向だ。その一方で住宅や空き家は増えており、久元市長は「既存のインフラを賢く使うことが大事」と指摘。解体補助制度をはじめとした空き家の活用促進策や、地域の拠点駅の再整備などを紹介した。
人口減少時代の都市の街づくりはどうあるべきか-。参加者からは「郊外のリノベーションとは」「震災の街づくりへの影響は」などと質問が続いた。
ゲスト / Guest
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久元喜造 / Kizo HISAMOTO
神戸市長 / Mayor of KOBE city
研究テーマ:自治体消滅にあらがう
研究会回数:6