2024年11月29日 14:00 〜 15:15 10階ホール
林欣吾・電気事業連合会会長 会見

会見メモ

日本のエネルギー政策の方向性を示すエネルギー基本計画の見直しに向けた議論が大詰めを迎える中、電気事業連合会の林欣吾会長(中部電力社長)が登壇。現行のエネルギー基本計画で示される「可能な限り原発依存度を低減する」という文言を削除するとともに、「原発の増設、リプレース」を明確に位置付けるよう求めた。

林会長は、デジタル化の進展、半導体工場の新増設により将来的に電力需要は伸びる蓋然性が高いと説明。脱炭素化、安定供給、安全保障という「多元方程式」を解くためには、再生可能エネルギー、原子力、脱炭素火力などあらゆる電源を投入する必要があるとした。

原子力については長期にわたり巨額の投資が必要となる。「民間として取り組む上では、原子力の位置づけを明確に示し、エネルギー政策における予見性を確保する必要がある」とし、国が具体的な開発・建設目標を示すことが、原子力サプライチェーンを維持するうえでも必要になると述べた。また原子力損害賠償制度が「無過失無限責任」となっている点についても「投資判断・ファイナンスにおけるネックとなる」とし、米英仏のように「有限責任」とする見直しが必要との考えを示した。

 

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信社)

 


会見リポート

「原発の最大限活用も必要」

西尾 邦明 (朝日新聞社論説委員)

 安定供給と脱炭素化、経済成長のいずれも追求しなければならない難しい局面にあるのが日本のエネルギー政策だ。政府の第7次エネルギー基本計画が年度内に閣議決定され、2040年度の電源構成を初めて示すことになる。

 前回21年の計画では再生可能エネルギーの主力電源化を徹底し、再エネ最優先の原則で取り組むことになっている。林氏は「再エネの主力電源化に大賛成」とする一方、今回の計画では「原発依存度を可能な限り低減する」方針を削除し、新増設・建て替えを明記して「原発を最大限活用すべき電源に位置づけ、旗幟きしを鮮明にしてほしい」と訴えた。

 ざっくりと言えば、日本の電源構成に占める火力は約7割もある上に、半導体工場やデータセンターの新設で電力需要は増えそうだ。太陽光や風力発電の拡大だけでは足りず、しかも天候に左右される弱点がある。水素・アンモニアなど火力発電の脱炭素化に取り組むとともに、原発と再エネは最大限活用していくことが欠かせない――という趣旨だ。

 ただ、原発を過渡期に利用するとしても、再エネと同等に拡大していくことが現実的と言えるのだろうか。東京電力福島第一原発事故の経験は日本社会にとって極めて重く、その廃炉は終わりがみえない。核燃料サイクルや「核のごみ」などバックエンドの問題は世代を超える難題だ。経済性でも電力自由化後の新増設はかなりの優遇策がなければ難しい。

 質疑では、投資環境が整えば新増設するのかを問われ、林氏は「地域性の違いはあるが、やっていく努力をする」と答えた。原発が必要としても民間でできる事業なのかとの質問には「国との役割分担だ。民間の活力は絶対にある」と言い切った。

 当事者として重い発言だ。原発・エネルギー政策が岐路にあるからこそ、立場を超えて議論を深めていくことが重要である。


ゲスト / Guest

  • 林欣吾 / Kingo HAYASHI

    電気事業連合会会長、中部電力社長 / Chairman, Federation of Electric Power Companies (FEPC)

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