2024年09月05日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「巨大地震を考える」(1) 南海トラフ地震対策と臨時情報 福和伸夫・名古屋大学名誉教授

会見メモ

8月8日に宮崎県沖の日向灘でマグニチュード7.1の地震が発生し、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が出た。解除までの1週間、巨大地震発生への緊張が高まり社会生活にも影響を与えた。巨大地震のメカニズムや防災・減災、東日本大震災の教訓を風化させないためにメディアに何ができるのかなどについて考えるシリーズの第1回として名古屋大学名誉教授で地震工学が専門の福和伸夫さんが「南海トラフ地震対策と臨時情報」をテーマに登壇。「臨時情報は一つのきっかけづくりになる。臨時情報の是非を問うのではなく、事後への備えとしてどう活用していくのかを議論してほしい」と訴えた。

 

司会 倉澤治雄 日本記者クラブ企画委員


会見リポート

臨時情報 報道も未周知

倉澤 治雄 (シリーズ担当企画委員 日本テレビ出身)

 今年8月8日、日向灘でM7・1の地震が発生、初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発出された。8月15日に解除されるまでの1週間、巨大地震への緊張が高まった。ともすれば緩みがちな備えを強化し、メディアの役割を再確認する意味を込めて、シリーズ企画「巨大地震を考える」を始めた。

 初回は「臨時情報」の制度設計にも加わった福和伸夫名古屋大学名誉教授に「南海トラフ地震対策と臨時情報」をテーマにお話しいただいた。福和名誉教授は耐震工学や防災の専門家。冒頭「名古屋に対する地域愛が私のベースです」と語った上で、日本の製造業を担う中部から関西が被災すれば、「日本は国難に陥る」と警告する。

 南海トラフ地震の発生確率は30年間で70―80%と言われ、被害想定は死者最大32万人、被災者6100万人、年間被害額214兆円である。今回の臨時情報発出については、「国民の受け止め方は比較的冷静だった」とした上で、被害軽減の鍵は「事前対策にある」と幾度も強調する。また「事前対策」の成否は国民の意識変革であり、国や行政に頼るのではなく、個人、会社、産業界、地方自治体、政治・行政が力を合わせて知恵を絞り、防災意識を高めなければならないと強調する。

 メディアに対する注文も率直だ。そもそも「臨時情報」について「メディア各社で周知されていなかった」と指摘、「国民の防災意識をリードするのはメディアである」と奮起を促した。巨大地震は必ず起きるが、いつ起きるかはわからない。中部・関西が被災すれば産業が崩壊し、東京が被災すれば国の機能が停止する。福和名誉教授は都市、建築物、港湾、交通インフラ、浄水場、超高層ビルなど具体例をあげながら、「国や行政に全部やらせることはあり得ません。人任せにしてはいけないのです」と締めくくった。熱く息詰まる会見は、質疑を入れてほぼ2時間に及んだ。


ゲスト / Guest

  • 福和伸夫 / Nobuo FUKUWA

    名古屋大学名誉教授、あいち・なごや強靱化共創センター長

研究テーマ:巨大地震を考える

研究会回数:1

ページのTOPへ