会見リポート
2024年09月06日
15:30 〜 17:00
10階ホール
「2024 米大統領選」(10) 渡辺靖・慶應義塾大学教授
会見メモ
11月5日の投開票まで2カ月を切った。夏の共和、民主両党大会を経て、選挙戦はトランプ、ハリス両候補が対立する構図で終盤に入った。最新情勢と今後の注目点、そして今回の選挙戦から見えてくる米社会の中長期的な変化などについて現代米国論、パブリックディプロマシー論などを専門とする渡辺靖・慶應義塾大学教授が話した。
司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞社)
会見リポート
共通認識欠き深まる分断
岸田 芳樹 (時事通信社取締役(国際担当))
世界が注目する米大統領選が11月に迫る中、会見の前半で選挙戦の最新情勢、後半で中長期的な米社会・政治の動向を分析した。
民主党のハリス副大統領が、支持率でわずかに共和党のトランプ前大統領をリードしているが、勝敗を決める激戦州で優位に立っているとは言えない。民主党はペンシルベニア州、共和党はジョージア州での勝敗が大きな鍵になると指摘した。勝敗が決まらず法廷闘争に持ち込まれる可能性、両候補とも選挙人過半数の270を獲得できず、下院で各州代表が1票を投じて大統領を決める究極のシナリオにも言及した。
1960年代には70%台だった政府への信頼が、現在は20%程度で政治エリートへの信頼が大きく低下。政治エリートは従来、中道派で絶妙なバランスを取ってきたが、最近では共和党が権威主義的傾向を強め、民主党は急進左派の影響を受け、両党とも中道派に対する求心力が失われている。「中道派欠落によって、米国全体として共通の現状認識を持つことができなくなっている」との指摘はまさに、分断が深まる米社会の現状を如実に表している。
世界史の中で、遠心力が急激に強まった社会が協調メカニズムを回復した例はあまりないと懸念を示しながらも、党派を乗り越えて支持を得ている州知事もわずかながら存在することから、現実主義でイデオロギー対立にしない政治的振る舞いに「分断を克服する手掛かりがあるかもしれない」と語った。
トランプ氏が掲げる米第一主義的な経済ナショナリズムについては、ハリス氏が勝利したとしても「社会の潮流」として背負うことになり、日本製鉄によるUSスチール買収計画に関しても、2年後の中間選挙、4年後の大統領選を見据え「USスチールを売った政治家というレッテルを貼られるので難しい」と述べ、実現に悲観的な見方を示した。
ゲスト / Guest
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渡辺靖 / Yasushi WATANABE
慶應義塾大学教授 / Professor, Keio University
研究テーマ:2024 米大統領選
研究会回数:10