会見リポート
2024年05月24日
11:00 〜 11:45
10階ホール
アンワル・イブラヒム マレーシア首相 会見
会見メモ
23日、24日の日程で来日したマレーシアのアンワル・イブラヒム首相が離日を前に「日本記者クラブのメディアとの対話」と題し登壇した。
司会 前田浩智 日本記者クラブ理事長(毎日新聞社)
通訳 池田薫さん/富永恵子さん(サイマル・インターナショナル)
The video in the English version is here
会見リポート
苦難から復活遂げた楽観論
岩田 智雄 (産経新聞社インド太平洋特派員)
長年の政治闘争の末、1年半前についに首相の座に上り詰めた。過去には、マハティール政権下での副首相からの失脚をはじめ、服役も経験している。紆余曲折を経て76歳となった今、政治家としての理念を聞いてみた。
「獄中で本を読み、文化や伝統、経済学などさまざまなことを理解した。その間で成長し、年齢を重ねた。自由と不自由とは何かを大抵の人より分かっており、民主主義の価値への感謝がある」と半生を振り返った。「政治指導者らが権力の座にあれば行き過ぎがある」との弁は、名指しせずとも長期政権を築いた宿敵マハティール氏への批判だろう。
多民族多宗教国家のマレーシアの目指すべき道については「イスラム教徒が60%だが、少数派に対し寛容と尊重を示す非常に穏健なイスラム国家にしていきたい」とし、人種差別主義や強権独裁主義ではなく「公正と人道主義的発想を育てる必要がある」と語った。
こうした理念の先に見据えるのが経済発展に違いない。マレーシアは、日本や中国などとの等距離外交を基本とし、中立を守る。
台湾周辺や、南シナ海での軍事的威圧を強める中国について「過度に攻撃的、好戦的になる兆候はない」と不安視せず、「どの国に対しても、貿易や経済活動への投資をやめさせるような取り組みがあってはならない」と強調した。
日本のマレーシアへ向ける視線についても「マレーシアはいまや30年も40年も前の姿ではない」と訴え、人工知能(AI)を含むデジタル分野などへの投資を呼び掛けた。
ただ、安全保障がなければ経済発展もない。苦難からの復活を遂げたからか「楽観主義者」を自任し、軍事的緊張をそこまで意識しなくてもよいのかという疑問も残った。
ゲスト / Guest
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アンワル・イブラヒム / Anwar bin Ibrahim
マレーシア / Malaysia