2024年02月08日 11:00 〜 12:00 9階会見場
航空安全推進連絡会議 会見 ―現役パイロットと管制官が考える羽田事故の課題―

会見メモ

羽田空港で1月2日に発生した日本航空機と海上保安庁機の衝突事故の調査と、今後の事故防止に必要な考え方について、現役のパイロットや管制官などが所属する航空安全推進連絡会議(航空安全会議)が会見した。

 

司会 江川紹子 日本記者クラブ企画委員

 

※写真左から牛草祐二事務局次長、永井丈道議長、石井直人副議長。


会見リポート

包括的な誤進入対策を

米田 真梨子 (北海道新聞社東京支社編集局報道センター)

 羽田空港で日本航空と海上保安庁の航空機が衝突した事故翌日の1月3日に緊急声明を出したのが、管制官やパイロットでつくる「航空安全推進連絡会議」だ。官民の枠を超えて、航空機事故の撲滅を目指す活動は58年目になるという。

 永井丈道議長は、責任の所在を個人に求めて罰する目的の警察の捜査より、事実を正確に把握して再発防止に生かすための運輸安全委員会の事故調査が優先されるべきだと主張した。航空機事故は複雑な要因で起きるため、責任を個人に求めることは不可能と説明。「刑事捜査が優先される日本では、証言者が証言をためらい、事故調査の目的を阻害する」と警鐘を鳴らした。

 国土交通省が1月9日に滑走路の誤進入を防ぐための緊急対策を発表したことについて、牛草祐二事務局次長は「性急な変更はかえって現場に混乱を招く」と批判した。対策では管制官が離陸順番を伝える「ナンバーワン」といった用語の使用を取りやめたが、航空会社のパイロットからは高い支持があると解説した。

 航空の安全を守る手法として、以前は事故後に対応する「事後対応型」が主流だったが、現在は国際民間航空機関(ICAO)が提唱する「セーフティー・マネジメント」へと変化が起こっているという。これは事故の未然防止を目指す「未然防止型・予測防止型」と言える。今回の事故なら「ナンバーワン」を使うリスクを評価して対応を判断する。牛草氏は「国交省航空局は2006年にセーフティー・マネジメントを導入したが、今回の緊急対策を見ても機能していない」と指摘。「その場しのぎの対応ではなく、包括的な滑走路誤進入対策の確立を航空局にお願いしたい」と求めた。

 報道に対して、「臆測や思い込みで発信せず、正確な情報をお願いしたい」との注文も付いた。正確な報道をあらためて自戒したい。


ゲスト / Guest

  • 永井丈道 / Takemichi NAGAI

    航空安全推進連絡会議議長(国内航空会社機長)

  • 石井直人 / Naoto ISHII

    航空安全推進連絡会議副議長(航空管制官)

  • 牛草祐二 / Yuji USHIKUSA

    航空安全推進連絡会議事務局次長(国内航空会社機長)

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