会見リポート
2024年01月11日
10:00 〜 10:45
9階会見場
マティアス・コーマンOECD事務総長 会見
会見メモ
経済協力開発機構(OECD)は11日、2024年版「対日経済審査報告書」を公表した。
マティアス・コーマン事務総長が会見し、概要を説明するともに質疑に応じた。
ヴィンセント・コーエン経済総局国別審査第3課課長、ムゲ・アダレト・マガウワン経済総局国別審査第3課 課長代理も同席した。
司会 菅野幹雄 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)
通訳 渡辺奈緒子さん/吉國ゆりさん(いずれもサイマル・インターナショナル)
The video in the English version is here
会見リポート
日本は財政赤字の削減必要
櫻田 玲子 (時事通信社外国経済部)
経済協力開発機構(OECD)のマティアス・コーマン事務総長は、就任以降初めて対面での日本記者クラブ会見に臨んだ。インドネシアが東南アジアの国で初となるOECD加盟に向けたプロセスを進めていることについて「歴史的であり、グローバルなレベルでも非常に重要だ。OECD諸国や世界経済にとっても良いことだ」と歓迎。オーストラリアの閣僚経験者として、中国の影響力が強まるインド太平洋へのOECDの関与強化を重視する姿勢がうかがえた。
2024年の対日経済審査報告書では、新型コロナ感染拡大やエネルギー価格高騰への対応で、財政状況の悪化が深刻化していると指摘。財政赤字の削減を繰り返し訴えた。日本の病院では患者の入院日数がOECD加盟国を上回っていると指摘。さらに、高齢化が急速に進む日本では介護費用が財政を圧迫すると懸念を示し、重度の介護が必要な人以外は病院から家庭へのケアに移行するなど、効率化を呼び掛けた。
また、日本の合計特殊出生率が1・3を下回っていることに危機感を表明。「家族や子どもに対する包括的な支援策が非常に重要だ」と訴えた。具体的には「男性の育児休業取得率が低く、期間も短い」と指摘。「将来のキャリアに与える影響や給料が下がることを心配しているためだ」と背景を分析した上で、「従業員がどれくらい取得しているかを公表させれば、財政的な懸念を取り除いて意識を高めることにもつながる」と提案した。私は個人的に、日本で男性の育休取得が進まない原因の一つには「他の人が取っていないから」という遠慮があると感じており、コーマン氏の提案はいいアイデアだと思った。
このほか、企業の生産性向上には「もっと長く働いてもらうというのもカギだ」と話し、「定年制度を廃止すれば雇用が増加する」と提案。年功序列制度の維持にも疑問を呈した。
ゲスト / Guest
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マティアス・コーマン / Mathias CORMANN
経済協力開発機構(OECD)事務総長 / Secretary-General, Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD)
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ヴィンセント・コーエン / Vincent KOEN
経済総局国別審査第3課課長
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ムゲ・アダレト・マガウワン / Müge Adalet MCGOWAN
経済総局国別審査第3課課長代理、シニアエコノミスト