2023年12月19日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「ハマス・イスラエル衝突」(5) 臼杵陽・日本女子大学教授

会見メモ

パレスチナ・イスラエル問題を40年超にわたり研究してきた日本女子大学の臼杵陽教授が登壇。

ハマスの成り立ち、武装組織というだけでなく、医療、教育、食糧支給を行うなど慈善団体としての性格もあわせもつ組織体制などについて解説した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 


会見リポート

ハマス問題に歴史的視点

半沢 隆実 (共同通信社論説委員)

 2023年10月、パレスチナ自治区ガザからイスラエルに攻撃を仕掛けたイスラーム組織「ハマス」。1200人に上る民間人らを殺害、イスラエルの苛烈な攻撃を招いたハマスについて、臼杵教授は歴史的視点を付与しつつ背景を詳説した。

 臼杵氏は23年がパレスチナ暫定自治を決めたオスロ合意から30年で、パレスチナ人が故郷を追われたイスラエル建国からは75年、第4次中東戦争とオイル・ショックから50年という節目の年であったことを指摘する。

 ハマスは1928年にエジプトで創設されたムスリム同胞団のガザ支部に起源を持つ。名称も「イスラーム抵抗運動」を表すアラビア語の頭文字に由来し、「闘争心」や「熱情」という意味があるという。

 またハマスの軍事部門カッサーム旅団は、パレスチナ抵抗運動の英雄であるイズディーン・アル・カッサームに由来する。彼は1935年、当時パレスチナを統治していた英国とその地に国家を建設しようとしていたユダヤ人の運動シオニズムと戦い殉教した。ハマスがイスラエル領内に向けて多用するロケット弾が彼の名前を冠しているのも、ハマスがカッサームの闘いを「理想」としているためだと臼杵氏は説いた。

 ハマスを理解する上で重要なのが、ガザの現状だ。臼杵氏は「ガザの難民キャンプは、他の地域と比べて劣悪な環境にある」と指摘した上で、失う物が何もないと感じる若者が「死を恐れず」ハマスの戦闘員になる傾向が見られると語った。

 狂信的なイメージが先行するが、アハマド・ヤシーン師を含めハマス指導部には高学歴者も多い。ガザでの支持が根強い背景として、臼杵氏は「ハマスはイスラーム教精神に基づく社会福祉や難民支援組織としても機能してきた」事実に留意すべきだと強調した。


ゲスト / Guest

  • 臼杵陽 / Akira USUKI

    日本女子大学教授 / Professor, Japan Women's University

研究テーマ:ハマス・イスラエル衝突

研究会回数:5

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