2023年12月21日 14:00 〜 15:15 10階ホール
神田眞人・財務省財務官 会見

会見メモ

神田眞人財務官が、G7議長・ASEAN+3共同議長としての日本の取り組み、成果について話した。

 

司会 藤井彰夫 日本記者クラブ企画委員長(日本経済新聞)


会見リポート

「他の国は殴り合って成長」

菅野 幹雄 (企画委員 日本経済新聞社上級論説委員兼編集委員)

 国際金融の舞台で幾多の海外出張に飛び回る神田氏。主要7カ国(G7)議長国、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、中国、韓国による「ASEAN+3」の共同議長国として特に多忙だった2023年を、60㌻を超す資料をもとに幅広に振り返った。

 「人類社会が大変容を起こしているなかで、新しい危機を乗り切らなければならない」と激変の時代を説く。デジタル産業革命による貧富の拡大や世論の分断、100年に1度のパンデミックに対応したマクロ経済政策の後遺症、そしてウクライナだけでなく中東にも及んだ戦火と、悩みの種は尽きない。

 だが「暗い話ばかりではない」とG7財務相・中央銀行総裁会議などで日本が主導した議論の成果を強調した。米国が利上げをする過去の局面でいつも起きた金融危機のリスクは抑えられた。「奉加帳の胴元」としてウクライナ支援でのG7協調をまとめ、8月には自らキーウを訪れた。国際課税の抜本改革は米議会の壁もあり条文の合意期限を延ばしたが「絶対成功させる」と意気込む。

 通貨外交の最前線に立つ神田氏の発言は常に市場の注目の的だ。「11月1日ごろに誰かが『スタンバイ』と言ったことを契機に(ドルの対円相場が)降りていって、いまは米利下げ期待の高まりなどでドル安基調にある」。市場介入を示唆する「スタンバイ」発言の当人がユーモラスに解説したものの、材料になるような言質は取らせなかった。

 安く見られている日本をどう感じているかと問われ「言いたいことは無限にあるが、立場上言いにくい」と返す。「他の国は殴り合いをしながら競争して成長している。相対的に日本はしんどいという風に言われている。私の意見と言われるとややこしいので、そう言っている人が多いという意味です」。前置きを忘れないが、本音は明らかだろう。


ゲスト / Guest

  • 神田眞人 / Masato KANDA

    日本 / Japan

    財務省財務官 / Vice-Minister of Finance for International Affairs

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