会見リポート
2023年11月28日
16:00 〜 17:00
9階会見場
エロワ・フィリョン赤十字国際委員会(ICRC)アフガニスタン代表部首席代表
会見メモ
アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが復権した2021年8月の政変から2年超がたった。
人道支援や開発援助を担う国際機関の多くが活動を停止。国際的な制裁により経済状況も悪化する中で、赤十字国際委員会は人道支援以外の事業も含め、人々の支援を続けてきた。
会見に臨んだアフガニスタン代表部のエロワ・フィリョン首席代表は、2022年、23年に比べ事業規模、予算が縮小している状況を説明。「(今年の)8月からは病院向けの資金援助もできない状態。これはアフガニスタンの人々の健康状態の悪化につながる」とし、2024年はさらに困難な状況に陥ると危機感を示した。
フィリョンさんは2021年6月に首席代表に就任。任期が終わるのを前に来日した。
司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員
通訳 池田薫 サイマル・インターナショナル
会見リポート
「制裁で女性の働き場無くなる」
竹田 亮 (時事通信社外信部)
イスラム主義組織タリバンがアフガニスタンで実権を再奪取してから2年超が経過した。国際社会は、女性や少数派を抑圧するタリバンの方針を制裁で改めさせようと試みてきた。そんな中、赤十字国際委員会(ICRC)のフィリョン・アフガン首席代表が会見で訴えた「制裁で(現在でも少ない)女性の働き場が無くなる」という指摘はとても新鮮だった。
担当特派員、外信部記者としてアフガンのニュースを追う中で、制裁がアフガン市民を苦しめる「副作用」を生み出すことはある程度認識していた。タリバンが崩壊させた民主政権では予算の約8割が国際支援。タリバンも実権を奪う前から、国土の半分近くを占めていた支配地での医療業務などを国際支援機関に丸投げしてきた。制裁下で支援が滞れば問題が起こるのは必然だった。
タリバンの国家運営能力が欠如する中、フィリョン氏によればICRCには大規模病院の運営といった新たな仕事が増え「事業規模は3倍」に。一方、2023年に入り制裁が強化され、支援が激減したため事業を削減せざるを得なかったという。
タリバンは女性への中・高等教育をほぼ禁止し、就職機会も激減させた。国連職員でさえも女性であれば働けなくなった。そのイメージが強く、報道でも注目を集めてきた。
現地で約2年半代表を務め、「タリバン前・後」を知るフィリョン氏は「ICRCをはじめ医療機関では、女性が(権利抑圧の)除外による利益を享受している」と指摘。医療分野に限っては女性が教育や労働を許可されていると語った。
女性の権利を認めさせるための制裁で、かえって女性が教育・就労の機会を失う。フィリョン氏は、アフガンとの今後の接し方を考える上で解決しなければならない「宿題」を投げ掛けてくれたように感じた。
ゲスト / Guest
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エロワ・フィリョン / Eloi FILLION
赤十字国際委員会(ICRC)アフガニスタン代表部首席代表 / the ICRC's head of delegation in Afghanistan